神楽坂行きつけの店 

「お客様は神様です」これは裏を返せば、「お客様はどうしようもなく我儘です」と言うことになる。これまで神楽坂の昼食処を蕎麦やスパゲッティーなどのジャンル別、ちょっといい店と言うタイトルなどで紹介した。しかし、そこで取り上げた店が余り行きたくない店に変わり、全く行かなくなってしまった店も出てきた。小さな約束が守られなかったこと、微妙に客の私への対応が変わったこと、味が微妙に落ちたことなどが原因である。また、新たに見つけたいい店もある。神楽坂に会社が引っ越してきて2年半、大体行く店は決まってきた。そんな店を紹介したい。まずは毎週必ずと言っていいほど行く店3店。以前にも登場した「ゆかり」と「串亭」に新たに毎週行くよ
うになった「一邑」を紹介する。
 まずは、今年の夏に再認識した「一邑」。魚中心の料理を昼も夜も堪能できていて、昼は毎週必ず1回は行く。女将さんと彼女が親方と呼ぶ和歌山県出身の板前さんがコンビ。女将さんは一升酒も苦にしない豪傑風の中に神経細やかなもてなしが心地よい。親方の料理は関西風に江戸風が加わった独特の味。昼は数品の魚料理が全て1000円で食べられる。特にぎんむつの焼き魚、鯛茶漬けは定番で、その他に鯖、鮭など季節に応じて種々の魚が主に焼き魚として多彩な味付けで登場してくる。ご飯は御櫃で出てきて自分で好きなだけ食べられ、味もいい。最後に出てくるデザートも毎日変わり、ちょっと粋な趣向で楽しませてくれる。
夜もここはなかなかいい。写真は昨年12月に味わったアンコウ鍋中心の料理。上の写真が前菜とここしか飲めないビール。下の写真がアンコウ鍋に女将さんがアンコウをまさに鍋に入れようとする瞬間を撮影したもの。料理は目と鼻と舌で楽しむものとはよく言ったものだと思ったひと時であった。夜はさらに2度ほど行っているが、魚料理を存分に楽しませてくれるいい店である。


 次いで「ゆかり」。ここは既に2度紹介しているが、現在でも続いている。漬丼と日替わりがお勧めのメニュー。漬丼はマグロがどんぶりに綺麗に並べられ、醤油と生姜と山葵が実に調和よく味付けされていて、マグロの新鮮さにマッチし、ご飯も美味しい。それに付いてくる蕎麦が絶品。それで900円は満足度からいくと安価である。次いで、子持ち鰈や鯖の煮付けなど日替わりの煮魚が絶妙の味を醸し出す。山芋のすり身が付いてくるがそれがまたいい。板前さんは毎日築地から来る魚を吟味していいものだけを料理に使うと言う。そして、何と言ってもいつも素晴らしい笑顔で迎えてくれるYさんには行くたびに癒される。そして、必ず最後戸口まであの笑顔で送り出してくれ、手を振って深々と頭を下げるあの姿を見るとまた来ようと言う気に必ずさせてくれる。板前さんは利き酒の免許を持っていると言う。一度夜行ってみたい店の一つである。但し、この店、今年の1月で昼食はしばらく休みになると言う。残念であると同時に必ずや再開して欲しいと強く願っている。

 三番目に「串亭」。以前紹介したシェフは1年前に突然辞めてしまったが、その後二人のシェフが交代で引き継いでおり、味は全く変わらないと言っていい。また女性のTさんはその後店長になり、チェーン店の二子玉川店や恵比寿の本店などに一時出ていたが、最近戻ってきて相変わらずの魅力を振りまいている。ともかくここは落ち着いた雰囲気があり、週一度行かないとリズムが崩れてしまう感覚を持たせてくれる。まだ夜は行っていないが、今年中には一度実現したいと思っている。
 その他、週一度とはいかないが、暫く行かないと口寂しくなる店として、蕎麦の店「もんど」、日本封韓国料理の店「翔山亭」、親子丼の店「あべの」がある。この3軒はいずれも以前に紹介していて、あの時の印象がずうっと続いている。
そして、このジャンルに入るラーメンの店を新たに紹介したい。ひとつは昔ながらの中華そば屋「マルナカ」。写真にあるように2種類しかないが、ラーメンというよりは中華そばと言う表現がぴったりのシンプルさとあっさりとしているがコクのある味が人を大いに引き付ける。麺は太めで腰があって香りもよくいうことなし。価格も550円と安く、いつもそれに美味しい焼き豚が数枚入ったチャーシューメンを頼むが750円と安くそれで十分過ぎるほど満腹感で満たされる。

 次いで、「俺流ラーメン神楽坂店」。ここは券を自動販売機で買うので何となく安っぽく感じてずっと敬遠していたが、ある日思い切って入って、きめの細かい注文に満足感を覚えた。まず種類が多く、しかもその一つ一つに量と味のこってり感と麺の太さを選択できる。味はよく、麺も腰があり、上記の中華そば屋の対極として存在感がある。