神楽坂に会社の事務所を移して1年半余りが経過した。これまでに、横丁の食事処、蕎麦処やパスタ処を食事処として紹介してきたが、今回は私が気に入っている食事処を題名として紹介したい。
いい店の条件は、シンプルに食事に満足感があり、店の雰囲気がいいことであり、総合して幸せな気分になれることである。
まずは、「串亭」。神楽坂の大通りを飯田橋駅から登ってきた頂上付近の地下にある店。上の写真の横を通って地下への階段を下りていく。下りてすぐ左に入口があり、扉を開けて入ると、左奥に数人座れるテーブルの部屋、右に行くと12人ほど座れる横に長いL字型のカウンターがある。私は独りで行くことが多いが、会社仲間と行くこともあり、カウンターにしか座ったことがない。カウンター入口に若い女性がいつも笑顔で迎えてくれる。
目の前でシェフが魚や肉、あるいはアスパラガスなどに衣を付け、油で揚げて出している。メニューを下に示すように4種類あるが、一番左は「ひつまぶし」でここのオリジナルではなく、昨年11月に開店した姉妹店のメニューである。焼いたアナゴをご飯にまぶして食べ、最後にお茶づけで食べるのがなかなか乙な味でいい。
ここのオリジナルは、3種類。魚中心の串揚げ(日によって異なる)とアスパラガスの揚げ物を添えた品がメインの「究極の串揚げ御膳」、鶏のから揚げでカニのあんかけが自慢の「唐揚げ御膳」、そして柔らかなロースカツ中心の「ロースかつ御膳」である。付け合わせは共通で日によって異なり、何が出てくるかもひとつの楽しみである。それに味噌汁とご飯が付く。
魚は青森からの産地直送。豚肉も三浦半島の岬の養豚場と契約しているとのこと。この日は上の写真にあるように海老とアスパラガス(これは定番)に鰻と舞茸を揚げたものであった。揚げたてで実に香ばしく、付け合わせのポテトサラダ、漬物、牛蒡と人参の煮物が串揚げをサポートしている感があった。シェフは若くて感じがよく、またすっきり感の笑顔が素敵な女性がいつも明るく気遣ってくれ、会話にも花が咲く。
大体週に一度のペースで行っているが、昨年10月に昼食は止めるという宣言があり、文句を言ったところ、他の客も同じように抗議をしたのだろう、都内に数件のチェーン店を持つ社長が続けることに決断を下してくれて、続いている。そのせいか11月以降、かなり客数が増え、時々入れないことがある。客層は若者から年寄りまで、男女大体同じ比率であり、安定した人気を誇っていると言える。また、夜はお任せの串揚げメニューであり、10種類以上あるとのこと。一度行ってみたいと思っている。
次いで、毘沙門天の横を左に入って少し行くと、写真の店構えの場所がある。ここの2階にカレーライスが美味い「Parador de KAGURA」がある。
二人の若い男性がやっている。カウンターとテーブル席に分かれていて、カウンターは夜バーとなり、カクテルなどが楽しめるらしい。
カレーライスは、まずは本場イタリアのサラダを思わせる本格的な味がいい。そして、カレーライスは煮込んだカレーに加えて鶏肉をきちんとフライパンで焼いたものを混ぜ合わせ、実にコクのあるいい味を出している。そして、最後に美味いコーヒーが出てくるのが嬉しい。水も薄い透明グラスにミネラルウオーターを注いだものが実に清潔感があってこれまたいい。これで締めて650円という安さ。「最初の設定が安すぎました」と男性が言うが、「これから上げる予定はあるの?」と聞くと「いや上げるつもりはありません」ときっぱり。実に真面目であり、清潔感溢れる店の感じと相俟って満足度が高い。
その建物の1階は写真の看板の店「シンガポール キッチン」。ここもカウンターとテーブル席だが、ややだだっ広い感じがする。シンガポール独特の味のするランチはいい味を出していて、時々行く。雰囲気も素人っぽい小柄の若い女性の気遣いが満足感を与えてくれる。
蕎麦処として紹介した「ゆかり」もいい店だ。ここでは、「漬丼とセイロ」が最高。新鮮なマグロにショウガとワサビの利いた丼はいつ行っても同じ味で幸福感を味わえる。セイロは神楽坂では最も好きな味と歯ごたえだと思っている。店には常に琴の音が流れており、真新しいカウンターと椅子席が清潔感を漂わせている。女性も実に愛想がよくいい感じである。
また、親子丼の店として、以前に紹介した「あべの」に加えて「鳥半」を紹介したい。「あべの」は秋田の地鶏を使った柔らかい鶏肉とふわっとした玉子焼きが実にマッチしていていい。
付け合わせの豆腐もその味を引き立てている。店はカウンターとテーブル席だが、綺麗であり、シェフと女性の態度も好感が持てた。夜も一度お邪魔したことがあるが、鶏尽くしのメニューを肴に、いい酒に酔いしれた。