最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。
http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201112/#topic01
1、はじめに
フッ素化カーボン材料は電池材料として古くから使用されている。最近では、フッ素化フラーレンやナノファイバー、グラフェンなどいわゆるフッ素化ナノカーボンが注目されている。フッ素化グラフェンについては既に述べたのでここではそれ以外のフッ素化カーボン材料について最新の情報を纏めた。
2、電池やキャパシタ負極材としてのフッ化炭素
CF0.9~1.3のフッ化炭素は高い電気抵抗を有していてLi電池の負極材として使用されている。V.N. Mitkinは、超化学量論的フルオロカーボン(FC)と熱的に膨張させたグラファイトやメソポーラスカーボンなどの高多孔性カーボンとの混合におけるメカノケミカル活性化プロセス(MAP)による合成法と物理的・化学的性質の総説を報告している。1)下図にMAPによるナノコンポジットの合成のイメージを示す。FCのナノ粒子は表面において水と反応してFがOHに置換していることがグラファイトとのナノコンポジットを形成する上で重要なポイントであることが分かった。
Young-Seak Lee らは、電気二重層キャパシタ(EDLC)の電気化学性能に及ぼす
活性炭電極のフッ素化効果を調べた。2)
フェノール樹脂から作製した活性炭の表面を室温でF2/N2比を変えてフッ素化し、EDLCの電極材料として使用した。Table1にF2/N2=1/9でフッ素化した活性炭のF19MSP、2/8のF28MSP、3/7のF37MSPについて、フッ素化しない元の活性炭RMSPと比較して、表面積、孔の全体積、t-plot微細孔の体積、メソ孔の体積と全体積との比を示す。いずれもフッ素化することにより表面積は増大した。その中で、F28MSPが最高値を示した。
また、EDLCの比静電容量をTable4に示す。F19MSPおよびF28MSPを使用したEDLCが非フッ素化RMSPのそれより高い値を示し、F28MSP使用のEDLCが最高値を示したが、フッ素化が最も進んだと思われるF37MSP使用のEDLCはRMSPより低下してしまった。これは表面抵抗が大きくなり、比伝導度が低下したためであることを突き止めている。
3、フッ素化フラーレン
ダイキン工業と大阪大学は高いキャリア移動度とデバイスとしての安定した機能を両立でき、かつデバイス作製を容易にできる、下記に示す含フッ素フラーレン誘導体を提案している。3)ここで、フルオロアルキル基の役割は高い電子移動度を達成するためである。
化合物5の合成法は下記の通りである。化合物1は高いキャリア移動度を付与する。C12H25基の導入は有機溶媒への溶解性を高め、デバイス作製を容易にするためである。
4、フッ素化カーボンナノファイバー
Mark Duboisらは、Table1に示すような種々のフッ素化レベルのカーボンナノファイバーサンプルを作製し、熱重量分析を用いて、フッ素化カーボンナノファイバーの熱分析を行った。4)ここで、Controlled fluorinationはフッ素化剤TbF4の熱分解で生ずるフッ素原子によるフッ素化。そして、Static direct fluorinationはF2ガスを密閉反応器中に満たして行ったフッ素化である。
Table2には熱重量分析結果を示す。ここで、T10%は10%の重量損失の温度。TC-FはC-F結合の切れる温度、Tcはフッ素化されていない部分も含めて分解するいわゆる燃焼温度である。フッ素化方法により異なる熱安定性得られることが分かった。結論として、Controlled Fluorination法により、465℃付近でフッ素化するのが最適であった。これにより、耐熱性の高い固体潤滑材の製造法が示唆された。
5、おわりに
フッ素化カーボン材料は、電池材料として使用されてきたが、最近ではここで述べたように、キャパシタ、有機半導体デバイス、固体潤滑材などとしての可能性が示されている。以前に述べたグラフェンをはじめとして、フラーレンやカーボンナノファイバーなどのいわゆるナノカーボンをフッ素修飾することで全く新しい材料が可能となったためである。今後の発展を大いに期待したい。
文献
1) V.N. Mitkin Journal of Fluorine Chemistry 132 (2011) 1047-1066
2) Young-Seak Lee et al Journal of Fluorine Chemistry 132 (2011) 1127-1133
3) ダイキン工業、大阪大学 特開2011-121886
4) Mark Dubois et al Carbon, 49(2011) 4801-4811