「含フッ素両親媒性ポリマー」

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。
http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201111/#topic01

1、はじめに
最近目に止まった3種類のフッ素系両親媒性ポリマーについて述べる。ひとつは薬剤伝達物質としてのポリマーであり、2番目はDNA濃度を決定する手段としてのポリマー、3番目は綿布に超撥水性を付与するポリマーである。

2、薬剤伝達ポリマー
Z生体医療にとって両親媒性ポリマーが重要であるという認識は益々高まっている。両親媒性ポリマーは薬剤伝達の担体として十年以上前から検討され、薬の包含、薬剤伝達、画像診断などに適用されている。ポリマーとしては、リポソーム、生体分解性ポリマー、水溶性ポリマーなどがある。
M. K. Pandeyらは下図に示すパーフルオロアルキル基含有ノニオン系両親媒性ポリマー5a-cおよび7a-cを合成し、薬剤伝達の担体としての可能性を調べた。1)いずれもエチレンオキサイド鎖の長さを変え、親水性・疎水性バランスを調整している。
FT1
本ポリマーは、水溶液中でFig.1に示すようなミセルを形成し、輸送分子を包含する。動的光散乱法によるウコンの黄色色素クルクミンおよびC3F7(CH2)7OHの場合の包含能力をTable1に示す。クルクミンの場合は5の方が、C3F7(CH2)7OHの場合は7の方が高いことが分かった。
FT2
3、DNA濃度の決定
Ling Liらは、共鳴光散乱法によるDNA濃度を決定の新規探査物質として、下図に示すカチオン系のフッ素ポリマーを合成した。2)本ポリマーは、pH4.0から7.0の間でDNA分子の表面に凝集し、共鳴光散乱ピークが370nm、400nm、420nm、470nmのところに出現した。その強度はDNAの濃度に比例した。共鳴光散乱の260nmピークが、DNA濃度およびポリマー濃度の増大と共に増大することを含めてFig.4に示すような機構が提案されている。即ちDNAの核酸のリン酸基と結合し、さらにフルオロアルキル基とDNAの疎水-疎水結合により、凝集からインターカレーション結合を形成する。
FT3
4、超撥水性綿布
Ruke Baiらは、下図に示す両親媒性アジド基含有トリブロックポリマーを可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法で合成し、綿布へ加工して超撥水性(水の接触角155度)を付与できた。3)
FT4
本ポリマーは、UV照射により、アジド基により綿と共有結合している。従って、Fig.11に示すように、pH2から12の広い範囲の水溶液に浸漬して100時間後でも148度以上の水の接触角は保たれており、化学的耐久性が高いことが分かった。
FT5
5、おわりに
フッ素系両親媒性ポリマーについて、薬剤伝達、DNA濃度の決定、超撥水性綿布への応用について述べた。薬物伝達については薬剤の包含能力が高いことが示され、DNA濃度が簡単に決定でき、また簡便に親水性の綿布を超撥水性にできた。今後、かなり広い分野でその能力を発揮し、有用な材料となることが期待される。

文献
1) Mukesh K. Pandey et al Polymer 52(2011) 4727-2735
2) Ling Li et al Journal of Fluorine Chemistry 132(2011) 35-40
3) Ruke Bai et al Polymer 51(2010) 1940-1946