切子の科学

「化学と工業」と言う雑誌に「もっと光を有効利用するために光工学を変えるプラズマモニクス」と題した論文があった。その中に先ごろ紹介した日本伝統の切子のあの美しい色は金属が作り出しているとの記述があったので紹介する。

下図に切子のぐい呑みおよび金のコロイド溶液を示す。
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金属は通常キラキラ輝いて見えるが、ガラスの中でコロイド状に分散すると、特定の波長の光を吸収して呈色する。金はワインレッド、銀は黄色、銅は暗い赤色である。また、同じ金でもロッドの長さ(コロイド微粒子の大きさ)が変わると上図のように多彩な色を提供してくれる。

プラズモニクスとは、1990年代に入って世界的に注目されてきた科学技術分野で、プラズモンという光学現象を応用利用するものである。プラズモンとは金属の表面に光が当たると金属表面の自由電子が光の電場の振動でプラズマ振動と言う集団運動を起こすことに由来する現象で、切子やステンドグラスの色もこの現象による。

つまり、あの切子は古くて新しい科学技術の産物なのである。

松尾 仁