Archive for 12月, 2011

「フッ素化カーボン材料」

水曜日, 12月 21st, 2011

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201112/#topic01

1、はじめに
フッ素化カーボン材料は電池材料として古くから使用されている。最近では、フッ素化フラーレンやナノファイバー、グラフェンなどいわゆるフッ素化ナノカーボンが注目されている。フッ素化グラフェンについては既に述べたのでここではそれ以外のフッ素化カーボン材料について最新の情報を纏めた。

2、電池やキャパシタ負極材としてのフッ化炭素
CF0.9~1.3のフッ化炭素は高い電気抵抗を有していてLi電池の負極材として使用されている。V.N. Mitkinは、超化学量論的フルオロカーボン(FC)と熱的に膨張させたグラファイトやメソポーラスカーボンなどの高多孔性カーボンとの混合におけるメカノケミカル活性化プロセス(MAP)による合成法と物理的・化学的性質の総説を報告している。1)下図にMAPによるナノコンポジットの合成のイメージを示す。FCのナノ粒子は表面において水と反応してFがOHに置換していることがグラファイトとのナノコンポジットを形成する上で重要なポイントであることが分かった。
FT1
Young-Seak Lee らは、電気二重層キャパシタ(EDLC)の電気化学性能に及ぼす
活性炭電極のフッ素化効果を調べた。2)
フェノール樹脂から作製した活性炭の表面を室温でF2/N2比を変えてフッ素化し、EDLCの電極材料として使用した。Table1にF2/N2=1/9でフッ素化した活性炭のF19MSP、2/8のF28MSP、3/7のF37MSPについて、フッ素化しない元の活性炭RMSPと比較して、表面積、孔の全体積、t-plot微細孔の体積、メソ孔の体積と全体積との比を示す。いずれもフッ素化することにより表面積は増大した。その中で、F28MSPが最高値を示した。
FT2
また、EDLCの比静電容量をTable4に示す。F19MSPおよびF28MSPを使用したEDLCが非フッ素化RMSPのそれより高い値を示し、F28MSP使用のEDLCが最高値を示したが、フッ素化が最も進んだと思われるF37MSP使用のEDLCはRMSPより低下してしまった。これは表面抵抗が大きくなり、比伝導度が低下したためであることを突き止めている。
FT3
3、フッ素化フラーレン
ダイキン工業と大阪大学は高いキャリア移動度とデバイスとしての安定した機能を両立でき、かつデバイス作製を容易にできる、下記に示す含フッ素フラーレン誘導体を提案している。3)ここで、フルオロアルキル基の役割は高い電子移動度を達成するためである。
FT4
化合物5の合成法は下記の通りである。化合物1は高いキャリア移動度を付与する。C12H25基の導入は有機溶媒への溶解性を高め、デバイス作製を容易にするためである。

FT5
4、フッ素化カーボンナノファイバー
Mark Duboisらは、Table1に示すような種々のフッ素化レベルのカーボンナノファイバーサンプルを作製し、熱重量分析を用いて、フッ素化カーボンナノファイバーの熱分析を行った。4)ここで、Controlled fluorinationはフッ素化剤TbF4の熱分解で生ずるフッ素原子によるフッ素化。そして、Static direct fluorinationはF2ガスを密閉反応器中に満たして行ったフッ素化である。
Table2には熱重量分析結果を示す。ここで、T10%は10%の重量損失の温度。TC-FはC-F結合の切れる温度、Tcはフッ素化されていない部分も含めて分解するいわゆる燃焼温度である。フッ素化方法により異なる熱安定性得られることが分かった。結論として、Controlled Fluorination法により、465℃付近でフッ素化するのが最適であった。これにより、耐熱性の高い固体潤滑材の製造法が示唆された。
FT6
5、おわりに
フッ素化カーボン材料は、電池材料として使用されてきたが、最近ではここで述べたように、キャパシタ、有機半導体デバイス、固体潤滑材などとしての可能性が示されている。以前に述べたグラフェンをはじめとして、フラーレンやカーボンナノファイバーなどのいわゆるナノカーボンをフッ素修飾することで全く新しい材料が可能となったためである。今後の発展を大いに期待したい。

文献
1) V.N. Mitkin Journal of Fluorine Chemistry 132 (2011) 1047-1066
2) Young-Seak Lee et al Journal of Fluorine Chemistry 132 (2011) 1127-1133
3) ダイキン工業、大阪大学 特開2011-121886
4) Mark Dubois et al Carbon, 49(2011) 4801-4811

「含フッ素両親媒性ポリマー」

木曜日, 12月 1st, 2011

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201111/#topic01

1、はじめに
最近目に止まった3種類のフッ素系両親媒性ポリマーについて述べる。ひとつは薬剤伝達物質としてのポリマーであり、2番目はDNA濃度を決定する手段としてのポリマー、3番目は綿布に超撥水性を付与するポリマーである。

2、薬剤伝達ポリマー
Z生体医療にとって両親媒性ポリマーが重要であるという認識は益々高まっている。両親媒性ポリマーは薬剤伝達の担体として十年以上前から検討され、薬の包含、薬剤伝達、画像診断などに適用されている。ポリマーとしては、リポソーム、生体分解性ポリマー、水溶性ポリマーなどがある。
M. K. Pandeyらは下図に示すパーフルオロアルキル基含有ノニオン系両親媒性ポリマー5a-cおよび7a-cを合成し、薬剤伝達の担体としての可能性を調べた。1)いずれもエチレンオキサイド鎖の長さを変え、親水性・疎水性バランスを調整している。
FT1
本ポリマーは、水溶液中でFig.1に示すようなミセルを形成し、輸送分子を包含する。動的光散乱法によるウコンの黄色色素クルクミンおよびC3F7(CH2)7OHの場合の包含能力をTable1に示す。クルクミンの場合は5の方が、C3F7(CH2)7OHの場合は7の方が高いことが分かった。
FT2
3、DNA濃度の決定
Ling Liらは、共鳴光散乱法によるDNA濃度を決定の新規探査物質として、下図に示すカチオン系のフッ素ポリマーを合成した。2)本ポリマーは、pH4.0から7.0の間でDNA分子の表面に凝集し、共鳴光散乱ピークが370nm、400nm、420nm、470nmのところに出現した。その強度はDNAの濃度に比例した。共鳴光散乱の260nmピークが、DNA濃度およびポリマー濃度の増大と共に増大することを含めてFig.4に示すような機構が提案されている。即ちDNAの核酸のリン酸基と結合し、さらにフルオロアルキル基とDNAの疎水-疎水結合により、凝集からインターカレーション結合を形成する。
FT3
4、超撥水性綿布
Ruke Baiらは、下図に示す両親媒性アジド基含有トリブロックポリマーを可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法で合成し、綿布へ加工して超撥水性(水の接触角155度)を付与できた。3)
FT4
本ポリマーは、UV照射により、アジド基により綿と共有結合している。従って、Fig.11に示すように、pH2から12の広い範囲の水溶液に浸漬して100時間後でも148度以上の水の接触角は保たれており、化学的耐久性が高いことが分かった。
FT5
5、おわりに
フッ素系両親媒性ポリマーについて、薬剤伝達、DNA濃度の決定、超撥水性綿布への応用について述べた。薬物伝達については薬剤の包含能力が高いことが示され、DNA濃度が簡単に決定でき、また簡便に親水性の綿布を超撥水性にできた。今後、かなり広い分野でその能力を発揮し、有用な材料となることが期待される。

文献
1) Mukesh K. Pandey et al Polymer 52(2011) 4727-2735
2) Ling Li et al Journal of Fluorine Chemistry 132(2011) 35-40
3) Ruke Bai et al Polymer 51(2010) 1940-1946