「フッ素化ポルフィリノイド」

2012年5月15日

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。
http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201204/#topic01

1、はじめに1)
いわゆる化石燃料を使用しない新エネルギーの中で太陽電池は重要な位置付けにあり、今後の成長が期待されている。太陽電池におけるフッ素の役割としては、バックシートや反射防止材、表面保護材としてフッ素ポリマーが用いられ、また透明電極としてフッ素化ITOが用いられている。太陽電池の中では、色素増感型太陽電池が注目されている。何故なら、シリコン系や化合物系に比べて製造に大掛かりな真空プロセスが必要なく、大幅なコストダウンが見込まれることと、資源的制約がないこと、さらには形状や色に自由度があるなどのメリットがあるからである。但し、効率がせいぜい10%と低く、それが大きな課題である。色素増感型太陽電池の構造を図1に示す。封止材7の部分が枠材8と接着性塗膜9から成っている。ここで10、11は2枚の電極板、5は電解液である。10は2’の導電膜、1’の透明基板から成り、11は2の導電膜、1の透明基板、3のTiO2多孔質膜、4の増感色素から成リ立っている。この中で、封止材として、水酸基含有パーフルオロポリエーテル主鎖化合物とイソシアネーと化合物からなるプレポリマーを合成し、さらに触媒を加えた組成物を枠材であるEvOH樹脂フィルム上に塗布して作製した材料が提案されている。ここでは、この電解液にイオン液体/含フッ素ブロックオリゴマーのゲル電解液を用いること、および増感色素としてフッ素系色素が検討されているので紹介する。
FT1

2、イオン液体/含フッ素ブロックオリゴマー電解液
電解液にイオン液体を使用するメリットは、電解液特性の向上、長寿命性などである。特にゲル化剤と組み合わせて擬似固体電解質として有望視されている。それは薄膜で可撓性のある太陽電池として期待されるからである。この場合、イオン液体は不揮発性、不燃性、強力な電気化学的・熱的安定性のメリットがある。課題は、粘度を上げて流動性を下げるとイオン伝導度が低下することである。それを解決すべく、Krishnanらはフッ素系ブロックオリゴマーをゲル化剤として用い、ミクロ相分離により伝導度をあまり下げずにゲルの流動性を下げる方法を提案した。2)
図2示す、パーフルオロアルキル基とポリオキシエチレン基を有するイオン液体ブロックオリゴマーを合成し、色素増感型太陽電池へ適用した。合成法は図3に示す。本イオン液体は自己組織化して、溶媒フリーのイオンゲルを作る。静電相互作用、およびパーフルオロアルキル基とポリオキシエチレン基とが混合しにくいことによるミクロ層分離によって、イオンクラスターを作るので固体化は容易であった。表1に示すように高粘性と高イオン伝導度は両立し難い。しかし、低い流動性のナノ構造の流体は、ヨウ素イオンの拡散速度は大きく、下図に示す(2)や(3)のヨウ素化イミダゾリウムの単純なブレンドにより、粘度を下げることなしに十分に伝導度を上げることができる。例えば、1aに3のEtMeImIを0.75モル分率加えるだけで、85℃で4mS/cm以上のイオン伝導度を与えることができた。
FT2

表1 図2に示したイオン液体の粘度とイオン伝導度

イオン液体 粘度 イオン伝導度mS/cm
85℃ 95℃ 85℃ 95℃
1a 49800 37200 0.54 0.76
1b 38.5 27.7 1.67 2.17
2a 40.6 29 2.67 3.47
2b 47.1 34.2 2.15 2.7
2c 49.3 35.8 1.75 2.27

3、増感色素としてのフッ素化合物
色素増感型太陽電池においては、TiO2に増感色素を吸着させることが重要である。その際、溶媒を使用するが、その毒性や廃棄の問題がある。Collisらは、図3に示す方法で合成したパーフルオロアルキル基を導入したペリレン色素DOPFを用いて、安全な超臨界炭酸ガスを媒体とした色素増感太陽電池を検討している。3)
FT3
パーフルオロアルキル基を導入すると、超臨界炭酸ガスへの溶解性が向上する。光陽極であるTiO2に速やかに吸着するので、図4に示すように、非フッ素系のDOPに比して、有効な光電池性能を発揮する。
FT4
また、炭酸ガスは簡単に飛ばすことができるので、廃棄の問題もなくDOPFを容易に回収できる。

4、おわりに
太陽電池において、低コストで可撓性のあるフィルム状にできる色素増感型太陽電池が期待されている。それにフッ素がどのような役割を演じているかについて、特に電解液と増感色素についての最近の文献を紹介した。太陽電池ではバックシートや反射防止材、保護材料としてフッ素の役割は大きいが、本件のような例が実るとさらにその存在意義は大きくなると期待している。

文献
1) 松尾仁 塗装工学46(2011) 25-28
2) Sitaraman Krishnan et al Journal of Materials Chemistry 21(2011) 19275-19285
3) Gavin E. Collis et al Green Chemistry 13(2011) 3329-3332

「フッ素化ポルフィリノイド」

2012年3月30日

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1、はじめに
フッ素系ポルフィリノイドについては20年ほど前から研究されてきており、光線力学的療法(PDT)や診断へ適用されて重要性を増している。PDTは、心臓脈管、皮膚、眼などのガンに対する処置療法として有効である。ポルフィリノイドには、ポルフィリン、クロリン、フタロシアニン、コロールがあり、いずれもフッ素化体が合成され、研究されている。フッ素化体は、医薬・農薬での特異な生理活性のみならず、凝集を抑制する作用、光学パラメーターの調整や効果的な溶解性といった特徴がある。ここでは、フッ素化ポルフィリン、フッ素化クロリン、フッ素化フタロシアニン、フッ素化コロールについて、その概要と主にPDTの光増感剤としての可能性を述べた最近の総説を紹介する。1)

2、フッ素化ポルフィリン
フッ素化ポルフィリンの可能性を下記に示す。これまでß位にFを導入した系が検討されてきた。また、Cのピリジルタイプも詳しく検討されている。
FT1
下図に、ポルフィリンの5、10、15、20の位置にフッ素含有基が導入された具体例を示す。
FT2
PDTのためにデザインされた光増感剤は高い一重項酸素量子収率、有効な項間交差、長い三重項ライフタイムを示さなければならない。フッ素化ポルフィリンの銅錯体は、大環状核の電子密度が低いため光酸化に対して安定であり、項間交差が改善され一重項酸素が増大する。上図の4シリーズでは、4cが4a、4bに比して一重項酸素が多く生成し、4d、4eが4f、4gに比して三重項酸素の生成は多いが、一重項酸素のそれは差がない。5シリーズの場合は、5cと5dが最も高いin vitro光増感性を示すが、この場合一重項酸素の生成量とは必ずしも相関性がない。その他、鉄(III)、マンガン(II)錯体などの例が示されていて、フッ素の導入により酸化剤に対し安定化され、触媒活性が高く、高いレドックスポテンシャルを示す。

3、フッ素化クロリン
フッ素化クロリンの可能性を下図に示す。
ポルフィリン同様、5、10、15、20の位置にフッ素含有基が導入されている。生物組織への高吸収性と人体への無害性につながる近赤外領域での強い吸収が光増感剤としての可能性を約束している。フッ素の導入により、光増感性が増大し、in vivoで高い腫瘍の取り込みが観測された。
FT3
4、フッ素化フタロシアニン
フッ素化フタロシアニンの可能性を下図に示す。フッ素はベンゼン核に直接あるいは間接的に導入されている。
フタロシアニンにフッ素を導入することにより、重要なポイントである溶解性が向上した。
FT4
具体例を下図に示す。Rの部分にフッ素を導入した36a、36bは、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどの溶媒に溶けるようになった。
FT5
また、フッ素の導入により、金属部分の電子密度が減少し、凝集性や酸化性が減少し、安定性が増大した例も述べられている。さらに、光増感性が少量で発揮されることも例示されている。

5、フッ素化コロール
フッ素化コロールの場合は下図の可能性がある。フッ素は5、10、15の位置に導入され、鉄錯体が報告されている。光化学的性質が調べられており、蛍光発光寿命時間や項間交差時間がフッ素の導入により減少することが分かった。さらにPDTの光増感剤として今後重要であることも示唆している。
FT6
6、おわりに
フッ素系ポルフィリノイドについての最近の総説を紹介した。ポルフィリンやフタロシアニンなどPDTの光増感剤として有望視されていることが伺われた。また、フッ素化ポルフィリンは、生体膜中における電子伝達系と共役したカチオン輸送媒体として利用できる可能性がある物質であり、フッ素系フタロシアニンは2010年11月号でも紹介したように有機半導体薄膜として有望視されており2),3)、他への展開も含めて今後益々その重要性を増していくと期待している。

7、文献
1) T. Goslinski et al Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews 12(2011) 304-321
2) Christine Videlot-Ackermann et al Thin Solid Films 518(2010) 5593
3) D. Schlettwein et al Organic Electronics 12(2011) 1376-1382

「超撥水表面」

2012年2月23日

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1、はじめに
超撥水表面とは水の接触角で150度以上を言うが、1990年代にその開発は盛んになり、一部実用化されている。今日でも大きな関心が寄せられ、依然として開発は続いている。また、超撥水だけでなく超撥油性も加味した開発も行われている。本稿では、昨年Advances in Colloid and Interface Science に発表された総説から超撥水表面に関する最新の状況1) とJournal of Colloid and Interface Scienceに掲載された超撥水超撥油表面に関する報告を紹介する。

2、超撥水表面のレビュー1)
2.1.理論的モデル
下図の液滴に関して、理論的には下式のYoungの式が提案されているが、これは理想的な平滑表面に液滴を載せた場合に当てはまる式である。ここで、θはYoung接触角、γSV、γSL、γLVはそれぞれ固体/気体、固体/液体、液体/気体界面の単位面積あたりのエネルギー、即ち界面張力である。
FT1
実際にはミクロオーダーの平滑な面は稀であり、Wenzelは粗さ因子rを導入して下式を提案した。ここで、θWはWenzel接触角である。つまり、水は粗い表面の溝に入り込むと仮定していて、これは下図に示す所謂均質な表面(a)(Wenzel状態)であり、特に超撥水表面では実用的ではなかった。
FT2
そこで、Cassie-Baxterは不均質な表面(b)(CB状態)をイメージして下式を提案した。この場合、液滴は粗い面の突出部で点接触していて、溝は気体で満たされている。つまり、濡れ性が低いため溝に液体は浸透できない。
FT3
ここでΦSは固体と液体間の全面積と固体/液体並びに液体/気体間の平らな面の面積比である。さらに、粗さ因子を導入すると下記の式に変形される。ΦS=1の場合、rfはrに等しくなり、この式はWenzel式と同じになる。
FT4
この式とWenzelの式が成り立つのは粗さのスケールに対して液滴が十分大きい場合で、液滴が安定に存在する場合である。また、下図に示すように撥水状態のWenzel状態から臨界点を堺にCB状態への変換が起こる。つまり、Wenzel状態は90度と臨界点の間であり、CB状態は臨界点と180度の間である。但し、臨界点以下の撥水性でもCB状態が持続すると仮定すると下図の点線部分となり、90度より高い接触角を示す。
FT5
次いで、接触角においてヒステリシスの問題を議論している。特に滑落角における前進接触角と後退接触角、液滴の体積が減少していく時の後退接触角と増大していく時の前進接触角が取り上げられ、その差が40度にも達することがあり、その値から表面を特徴づけられるとしている。つまり、CB状態では差が小さく滑落しやすいが、Wenzel状態では差が大きく滑落しにくい。
2.2.超撥水表面を有する植物、動物
植物では、まずは蓮の葉が取り上げられている。この場合、汚れた水の中でも超撥水性を発揮し、汚れに対する防御と雨水によるセルフクリーニングの機能があることを指摘している。表面に突起があり、角皮素と撥水性の3次元ワックス細管で表皮が構成されている。蓮の葉以外にセルフクリーニング性に優れたサトイモの葉(159±2度)、表面にミクロンとナノオーダーのワックス構造を持つインドカンナの葉(165±2度)、異方性の突起を有する稲の葉は葉の筋の方向では滑落角が4度であるが、それと垂直の方向では12度であることなどが紹介されている。尚、蓮の葉は稲と違い、突起が均質に配列されているため、滑落角は2度以下と低い。
動物では、3µmから数百nm径の剛毛を有するアメンボーの足は分泌されたワックスの助けで超撥水性を示す。また、屋根瓦のような羽根の表面を有する蝶や10万のケラチン毛を持つヤモリなども超撥水表面を有している。さらに、昆虫の二枚の羽根に着目し、上の羽根がミクロンとナノスケールの層構造であることが超撥水につながり、水滴が羽根の表面を転がり落ちることにより、汚れを除去していることなどが述べられている。
2.3.超撥水表面作製法
人工的な撥水表面の作製は、上記で述べた自然界の超撥水表面構造を再現することが行われている。
ひとつは、リソグラフィー法であり、フォトリソグラフィー、ソフトリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー、電子線ビーム(EB)リソグラフィー、X線リソグラフィー、コロイダルリソグラフィーなどがある。
フォトリソグラフィーによる超撥水表面は最も使用されている方法である。ミクロあるいはナノレベルの粗表面構造を作製し、次いでC6F13C2H4SiCl3を処理して超撥水表面にしている。その電顕写真を下図に示す。
FT6
近年では、ナノインプリントリソグラフィーが注目されている。これは、ナノ模写とフォトリソグラフィーを組み合わせたものである。
次いで、プラズマ処理法やCVD法により表面を粗面化する方法がある。プラズマ処理法の場合、XeF2、CHF3/SF6やCF4でエッチングが行われている。この場合、C6F13C2H4SiCl3で後処理して、高接触角化している。CVD法では、プラズマを用いるPECVDで表面にAg/TiO2コア・シェル構造や、カーボンナノチューブを形成させることが紹介されている。特に後者は水の接触角170度を得ており、蓮の葉に比べても遜色ない。しかも蓮の花は高圧の水では超撥水性は維持できないが、カーボンナノチューブを形成した表面は維持でき、安定性が高い。その他、酸素プラズマで表面を粗面化した後、ペンタフルオロエタンのPECVDでフッ素化する方法などが述べられている。さらに、Layer by Layer Deposition法、コロイド状の粒子を組織化する方法、ゾルゲル法、電子スピン法や電子スプレー法などが紹介されている。
フッ素についてはその他、Fig.34に示す綿布表面を修飾してパーフルオロアルキルシランを処理した場合などが例示されている。
FT7
3、超撥水撥油表面
銅の上に超撥水かつ超撥油表面を簡単に作製する方法を述べている。2)まず、Cu(OH)2ナノロッドとCuOミクロフラワー構造をアルカリ共存下で酸化する方法で銅表面に形成させ(下図)、その後フッ素化すると下表のように超撥水性と超撥油性が得られた。具体的には、銅シートを2.5MのNaOHおよび0.13Mの(NH4)2S2O8水溶液に室温で20分間浸漬し、その後純水で洗浄、乾燥後0.01Mのパーフルオロオクタン酸水溶液に8分間浸漬し、エタノールで洗浄後、110℃30分間熱処理した。超撥油性は、ナノロッドとミクロフラワー構造のシナジー効果で達成されている。そして、液滴に圧力をかけても壊れないで超撥水撥油性を維持していることも確認している。
FT8
4、おわりに
超撥水についての最新情報が満載されたレビューを紹介した。理論的な観点から超撥水を言及し、超撥水達成のキーポイントは極表面の構造であり、植物や動物の例を多く紹介して議論している。そして、その表面を作製することが重要であり、その方法についても広く紹介している。フッ素は超撥水という観点では助役的な存在であると言えるかもしれない。一方、超撥油という観点ではフッ素は必須であり、上記の方法だけではなく、超撥水性で培った表面構造の作製法を利用して超撥油性を達成することができると考えている。今後は、超撥水・超撥油性表面を実用化していく動きが活発化していくことを期待したい。

文献
1) Y.Y.Yan et al Advances in Colloid and Interface Science 169(2011) 80-105
2) Zhaozhu Zhang et al Journal of Colloid and Interface Science 367(2012) 443-449

「無機ナノフルオライド」

2012年1月26日

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1、はじめに
無機フルオライドはこれまで工業的には、アルミニウム、ジルコニウム、レアメタルなどの精錬、ウラニウムの同位体分離、固体レーザーや反射防止コート、光ファイバーなどの光学用途に使われてきた。最近では、フルオライド化合物のナノケミストリーが注目されている。ここでは、ロシアのPavel P. Fedorov らの総説を中心の無機ナノフルオライドについて概説するが、その冒頭で述べているように、2000年から2009年にかけてのナノフルオライドに関する文献の数が対数的に増加していることからもそのことが如実に示されている。1)
FT1
2、無機ナノフルオライドの合成法
ナノフルオライドの合成法については、物理的、化学的方法があるが、ボールミルや超音波処理、マイクロ波併用の熱処理などの物理的方法は化学的な方法を必ずともなうので、ここでは化学的方法をいくつか取り上げていく。
合成法の骨子は、無機化合物(硝酸塩や塩化物など)をフッ素化して粒子径が10~100nmのナノフルオライドを作製することである。以下に各種合成を列挙する。
2.1.前駆物質の熱分解
前駆物質として、M(CF3COO)nが最も一般的である。典型的な熱分解プロセスは、オレイン酸などの高沸点溶媒とM(CF3COO)nを微量酸素および水を除去すべく100℃真空中で激しく攪拌し、さらにアルゴン雰囲気下、250~330℃に熱する。次いで、室温で過剰のエタノールを加えて反応を終了させる。沈殿物を遠心分離で液相から分離し、エタノールで数回洗浄し、70℃空気中で乾燥する。合成されたナノフルオライドはヘキサンやトルエン、クロロホルムなどの有機溶媒に容易に分散する。この方法で、MF2(M=Mg、Ca、Sr)やRF3、LiRF3、NaRF3(Rは希土類)、NaMF3(M=Mn、Co、Ni、Mg)、α-、β-NaYF4などが合成されている。
2.2.水溶液からの共沈
一般的な工程としては、フッ素化反応終了後、ナノフルオライドのナノ粒子水溶液にNaFなどを添加して、共沈させる。その後、エージングし、水やNH4HF2、メタノールで洗浄し、乾燥する、最後にアルゴン-SF6(9:1)などの雰囲気で高温で熱する。この場合、EDTAなどの有機化合物を加えて、ナノ粒子の表面を安定化することも行われている。本法で、例えばCeF3、EuF3ナノフルオライドが合成されている。
2.3.逆ミセルとマイクロエマルション沈殿
ここでは、最近の一例があげられている。ホスフィンオキサイドからなる抽出剤Cyanex923を含むn-ヘプタン溶液とNd(NO3)3水溶液を攪拌し、遠心分離により分離する(この場合、WO型逆ミセルあるいはマイクロエマルションができている)。次いでNH4Fと界面活性剤溶液に滴として注ぎ、超音波をかける。さらに遠心分離後、脱イオン化水とアセトンで洗浄し、真空乾燥して、NdF3ナノフルオライドを得た。
2.4.水熱合成
これは無機化合物が高温の水によく溶けることを利用した方法であり、有機溶媒を用いないことが特徴。反応温度(通常120℃から230℃)、PHや濃度さらにはオートクレーブの構造などを選定する必要がある。例えば、希土類の硝酸塩とNH4Fとを120℃~180℃の温度、pH=3~4.5の条件で反応させてRF3希土類のナノフルオライドを合成している。
2.5.非水溶媒熱合成
この方法は、非水溶媒を用いて高温で反応させる方法であり、酸素のコンタミを防ぎ、安定な表面を作り、凝集を防ぐことができる特徴がある。溶媒として、ジエチレングリコールなどが用いられ、ポリアクリル酸などの界面活性剤などが補助剤として使われることもある。CaF2、CeF2、CeF2:Tb3+などの合成例がある。
2.6.ゾル・ゲル法
古来のゾル・ゲル法は、前駆物質の溶液の合成、ゾルへの転化、そして、ゲルへの転化を経て、焼成、熱処理から成る。最近では、このステップの一部が欠けるプロセスも提案されている。化学反応はゲルへの転化工程で起こる。ゾル・ゲル法では、粒子の形やサイズのコントロールが難しく、粒子が単分散ではない。また、粒子の表面積が大きい例が多々ある。Al(OiPr)3のiPrOH溶液をアルコール系HFで処理後、溶媒を除去しながらゲル化するとAl-F-ゲルが生成する例が紹介されている。
2.7.その他の方法
上記の方法以外に、メカノケミストリー法、望みの形やサイズを作るためのマトリックスとして鋳型を用いる固体テンプレート合成法、溶融塩を利用するフラックス法、ガラス・セラミックスの酸腐食処理法などの方法が述べられている。
3、ナノケミカル効果
ナノ粒子は極めて高い表面積を有するので、高い化学活性を示す。そのことは、超強酸であったり、高い触媒活性だったりするが、熱分解性が高いとか水分や酸素の影響を受けやすいなどの負の特徴につながっている。
ナノ粒子は凝集しやすいが、そのために自己組織化して層を形成しやすい。その結果、超格子を形成できる場合がある。例えば、R(CF3COO)3をオレイン酸/t-オクタデカン/オレイルアミン中で熱分解してRF3とする場合などである。また、結晶成長は可干渉相間成長のような非古典的な機構で起こる。(ここでRは希土類)
フルオライド・ナノケミストリーの最大の特徴は、その合成の経路において非平衡相を形成することである。例えば、AlF3が非晶質状態から安定な三方晶形を形成する過程で非平衡状態の正方晶形を通ること、CaF2-RF3が非平衡状態の固体溶液状態として存在することなどが述べられている。非平衡状態から平衡状態への転換にはエネルギーバリアがあり、温度や時間をかけたり、触媒などを使う方法が述べられている。
物理化学的特徴としては、融点が低い、イオン導電性が高い、カチオン移動度が高いなどがある。

4、形とサイズの制御
ナノフルオライドのサイズや形態は、反応温度や時間、使用溶媒によって影響を受ける。また、塩酸や硝酸の添加、超音波照射、などの影響も受け、一次元、二次元、三次元の場合に分けて述べられている。

5、表面の修正とコア/シェル機構
ナノフルオライドの表面にシェルを形成し、表面を修正する方法が述べられている。例えば、MF2ナノ結晶体をオレイン酸で被覆し、疎水性粒子としての機能を発揮させ、また凝集を防ぐことができるなどの機能を持たせている。

6、ナノコンポジット
ガラスマトリックスの中にナノ粒子が分散した透明なナノコンポジットがよく知られている。例えば、50SiO2-30Al2O3-20CaF2/15-60nmCaF2:Sm3+やなどのアルミノシリケートがメインである。ここで、CaF2:Sm3+はSm3+がドープされたCaF2ナノ粒子である。核形成剤としてNiOなどが用いられることもある。また、ナノ粒子のサイズは温度や時間により変化する。

7、応用
ナノフルオライドは優れた発光原子団で、ナノシンチレーター、高解像度のカラーディスプレイ、白色発光デバイス、監視装置、ガン治療薬などに適用できる。
ナノフルオライドのコロイド溶液は人体中で安定で、広範囲のバイオ医療用途で期待される。例えば、MRIやCTスキャンにおいて常磁性のコントラスト剤が使われるが、クエン酸をコートしたGdF3-CeF3やポリアクリル酸をコートしたNaGdF4などのナノフルオライドが期待されている。また、乳がん細胞の優れた標識としてTb3+をドープしたGdF3ナノフルオライドが報告されている。2)
MgF2やAlF3のナノフルオライドはビタミンEやKの高活性・高選択性の不均一系触媒である。

8、おわりに
無機のナノフルオライドについて述べてきたが、図1にも示したようにこの10年間に文献の数は飛躍的に伸びていて、高い関心が示されている。特に希土類ナノフルオライドは優れた発光原子団などとして、エレクトロニクス、バイオの領域で期待されており、今後の動向が注目される。

文献
1) Pavel P. Fedorov et al J. of Fluorine Chemistry 132(2011) 1012-1039
2)A.K. Tyagi et al J. of Colloid and Interface Science in press 2011

「フッ素化カーボン材料」

2011年12月21日

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1、はじめに
フッ素化カーボン材料は電池材料として古くから使用されている。最近では、フッ素化フラーレンやナノファイバー、グラフェンなどいわゆるフッ素化ナノカーボンが注目されている。フッ素化グラフェンについては既に述べたのでここではそれ以外のフッ素化カーボン材料について最新の情報を纏めた。

2、電池やキャパシタ負極材としてのフッ化炭素
CF0.9~1.3のフッ化炭素は高い電気抵抗を有していてLi電池の負極材として使用されている。V.N. Mitkinは、超化学量論的フルオロカーボン(FC)と熱的に膨張させたグラファイトやメソポーラスカーボンなどの高多孔性カーボンとの混合におけるメカノケミカル活性化プロセス(MAP)による合成法と物理的・化学的性質の総説を報告している。1)下図にMAPによるナノコンポジットの合成のイメージを示す。FCのナノ粒子は表面において水と反応してFがOHに置換していることがグラファイトとのナノコンポジットを形成する上で重要なポイントであることが分かった。
FT1
Young-Seak Lee らは、電気二重層キャパシタ(EDLC)の電気化学性能に及ぼす
活性炭電極のフッ素化効果を調べた。2)
フェノール樹脂から作製した活性炭の表面を室温でF2/N2比を変えてフッ素化し、EDLCの電極材料として使用した。Table1にF2/N2=1/9でフッ素化した活性炭のF19MSP、2/8のF28MSP、3/7のF37MSPについて、フッ素化しない元の活性炭RMSPと比較して、表面積、孔の全体積、t-plot微細孔の体積、メソ孔の体積と全体積との比を示す。いずれもフッ素化することにより表面積は増大した。その中で、F28MSPが最高値を示した。
FT2
また、EDLCの比静電容量をTable4に示す。F19MSPおよびF28MSPを使用したEDLCが非フッ素化RMSPのそれより高い値を示し、F28MSP使用のEDLCが最高値を示したが、フッ素化が最も進んだと思われるF37MSP使用のEDLCはRMSPより低下してしまった。これは表面抵抗が大きくなり、比伝導度が低下したためであることを突き止めている。
FT3
3、フッ素化フラーレン
ダイキン工業と大阪大学は高いキャリア移動度とデバイスとしての安定した機能を両立でき、かつデバイス作製を容易にできる、下記に示す含フッ素フラーレン誘導体を提案している。3)ここで、フルオロアルキル基の役割は高い電子移動度を達成するためである。
FT4
化合物5の合成法は下記の通りである。化合物1は高いキャリア移動度を付与する。C12H25基の導入は有機溶媒への溶解性を高め、デバイス作製を容易にするためである。

FT5
4、フッ素化カーボンナノファイバー
Mark Duboisらは、Table1に示すような種々のフッ素化レベルのカーボンナノファイバーサンプルを作製し、熱重量分析を用いて、フッ素化カーボンナノファイバーの熱分析を行った。4)ここで、Controlled fluorinationはフッ素化剤TbF4の熱分解で生ずるフッ素原子によるフッ素化。そして、Static direct fluorinationはF2ガスを密閉反応器中に満たして行ったフッ素化である。
Table2には熱重量分析結果を示す。ここで、T10%は10%の重量損失の温度。TC-FはC-F結合の切れる温度、Tcはフッ素化されていない部分も含めて分解するいわゆる燃焼温度である。フッ素化方法により異なる熱安定性得られることが分かった。結論として、Controlled Fluorination法により、465℃付近でフッ素化するのが最適であった。これにより、耐熱性の高い固体潤滑材の製造法が示唆された。
FT6
5、おわりに
フッ素化カーボン材料は、電池材料として使用されてきたが、最近ではここで述べたように、キャパシタ、有機半導体デバイス、固体潤滑材などとしての可能性が示されている。以前に述べたグラフェンをはじめとして、フラーレンやカーボンナノファイバーなどのいわゆるナノカーボンをフッ素修飾することで全く新しい材料が可能となったためである。今後の発展を大いに期待したい。

文献
1) V.N. Mitkin Journal of Fluorine Chemistry 132 (2011) 1047-1066
2) Young-Seak Lee et al Journal of Fluorine Chemistry 132 (2011) 1127-1133
3) ダイキン工業、大阪大学 特開2011-121886
4) Mark Dubois et al Carbon, 49(2011) 4801-4811

「含フッ素両親媒性ポリマー」

2011年12月1日

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。
http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201111/#topic01

1、はじめに
最近目に止まった3種類のフッ素系両親媒性ポリマーについて述べる。ひとつは薬剤伝達物質としてのポリマーであり、2番目はDNA濃度を決定する手段としてのポリマー、3番目は綿布に超撥水性を付与するポリマーである。

2、薬剤伝達ポリマー
Z生体医療にとって両親媒性ポリマーが重要であるという認識は益々高まっている。両親媒性ポリマーは薬剤伝達の担体として十年以上前から検討され、薬の包含、薬剤伝達、画像診断などに適用されている。ポリマーとしては、リポソーム、生体分解性ポリマー、水溶性ポリマーなどがある。
M. K. Pandeyらは下図に示すパーフルオロアルキル基含有ノニオン系両親媒性ポリマー5a-cおよび7a-cを合成し、薬剤伝達の担体としての可能性を調べた。1)いずれもエチレンオキサイド鎖の長さを変え、親水性・疎水性バランスを調整している。
FT1
本ポリマーは、水溶液中でFig.1に示すようなミセルを形成し、輸送分子を包含する。動的光散乱法によるウコンの黄色色素クルクミンおよびC3F7(CH2)7OHの場合の包含能力をTable1に示す。クルクミンの場合は5の方が、C3F7(CH2)7OHの場合は7の方が高いことが分かった。
FT2
3、DNA濃度の決定
Ling Liらは、共鳴光散乱法によるDNA濃度を決定の新規探査物質として、下図に示すカチオン系のフッ素ポリマーを合成した。2)本ポリマーは、pH4.0から7.0の間でDNA分子の表面に凝集し、共鳴光散乱ピークが370nm、400nm、420nm、470nmのところに出現した。その強度はDNAの濃度に比例した。共鳴光散乱の260nmピークが、DNA濃度およびポリマー濃度の増大と共に増大することを含めてFig.4に示すような機構が提案されている。即ちDNAの核酸のリン酸基と結合し、さらにフルオロアルキル基とDNAの疎水-疎水結合により、凝集からインターカレーション結合を形成する。
FT3
4、超撥水性綿布
Ruke Baiらは、下図に示す両親媒性アジド基含有トリブロックポリマーを可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法で合成し、綿布へ加工して超撥水性(水の接触角155度)を付与できた。3)
FT4
本ポリマーは、UV照射により、アジド基により綿と共有結合している。従って、Fig.11に示すように、pH2から12の広い範囲の水溶液に浸漬して100時間後でも148度以上の水の接触角は保たれており、化学的耐久性が高いことが分かった。
FT5
5、おわりに
フッ素系両親媒性ポリマーについて、薬剤伝達、DNA濃度の決定、超撥水性綿布への応用について述べた。薬物伝達については薬剤の包含能力が高いことが示され、DNA濃度が簡単に決定でき、また簡便に親水性の綿布を超撥水性にできた。今後、かなり広い分野でその能力を発揮し、有用な材料となることが期待される。

文献
1) Mukesh K. Pandey et al Polymer 52(2011) 4727-2735
2) Ling Li et al Journal of Fluorine Chemistry 132(2011) 35-40
3) Ruke Bai et al Polymer 51(2010) 1940-1946

「フッ素化合物の酵素合成」

2011年11月14日

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1、はじめに
フッ素化合物の合成について酵素を触媒として使用する方法が開発されてきた。特に不斉合成については真価が発揮できそうであり、また特殊なポリマー合成においても興味ある研究がなされているので紹介したい。
2、不斉合成
gem-ジフルオロシクロプロパンが液晶の材料として注目されてきたが、伊藤らは、下記に示す螺旋状のgem-ジフルオロシクロプロパンの誘導体を化学-酵素触媒を用いて合成した。1)
Cyclohexane-1,4-dionを出発物資として、2つのジフルオロプロパン環をシクロヘキサンで繋ぐ構造1を化学触媒を用いて合成した。その後、下図に示すように、酵素触媒Lipaseを用いて光学活性体とすることに成功した。各種Lipaseを用いた場合の光学収率などをTable1に示す。光学的にピュアな化合物が得られている。
FT1

本化合物を下図の9e誘導体とすると優れた液晶性を示すことがわかった。
FT2
北爪らは、イオン液体中でフッ素化合物の不斉還元反応を酵素を用いて行い、下表の結果を得ている。2)この反応では水の存在が重要であることがわかった。
FT3
3、位置選択的合成
Steve S.F. Yuらは、下図に示すようなgem-difluorinated octanesの酵素触媒による位置選択的ヒドロキシル化反応を検討し、11が選択的に合成されたことを報告している。3)
FT4
4、機能性材料合成
Y.Poojaliらは、下図に示すシリコーン含フッ素脂肪族ポリエステルアミドをLipaseを触媒として合成した。4)
FT5
Table3に各種組成のポリマーの分子量と分子量分布(PDI)を示す。
FT6
柔軟なシリコーン部位と剛直なフルオロアルキレン部位が主鎖に並ぶユニークなポリマーでOFODの結晶性の白色固体からAPDMSの増加とともにアモルファス性が増大し、粘性液体からワックス体に変化した。
Debuigneらは、下図に示す、糖とフッ素含有カルボン酸とをLipaseを触媒として反応させ界面活性剤を合成した。ここで、CALBはCandida antarctica lipaseである。反応は80℃24時間で40%程度の転化率であった。界面活性能についてはFigure1に示す。低い表面張力と臨界ミセル濃度cmcが得られている。
FT7
5、おわりに
酵素を触媒として用いたフッ素化合物の合成は、温和な条件での光学あるいは立体選択性の高い化合物やユニークな機能材料の創出などの可能性があることが分かった。今後、重要な分野に発展していくことが期待される。

文献
1) Toshiyuki Itoh et al Journal of Fluorine Chemistry 130(2009) 1157
2) Tomoya Kitazume et al Tetrahedron Letters 47(2006) 4619
3) Steve S.F. et al Tetrahedron Letters 52(2011) 2950
4) Yadagiri Poojari et al Polymer 51(2010) 6161
5) Antonie Debuigne et al Carbohydrate Research 346(2011) 1161

発行:ダイキン工業株式会社 化学事業部 ファインケミカル部 WEBマガジン事務局

「新フルオロカーボンHFO」

2011年9月26日

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1、はじめに
フルオロカーボンは、20世紀末のオゾン層破壊問題、今世紀に入っての地球温暖化問題により、厳しい規制を課されてきた。前者ではCFC、HDFCが対象となり、HFC、HFEなどの代替フルオロカーボン類が登場してきた。後者ではHFCも規制対象になりつつあり、HFEも将来的には予断を許さない状況である。そこで、登場してきたのがGWPがHFEより低いCOF2やCF3IおよびハイドロフルオロオレフィンHFOである。前二者は、エッチング剤、洗浄剤として、半導体分野で使われている。HFOは冷媒、発泡剤や溶剤として期待されている。HFOについては、2010年「フッ素関連トピックス三題」の1月号、5月号で紹介したが、本稿では、その後のHFOの進捗状況を中心に述べてみたい。

2、ハイドロフルオロプロペン
これまでHFOとしては、ハイドロフルオロプロペンの開発が中心であり、下記の表に示すような構造が知られており、GWP値、沸点、臨界点、燃焼速度などのデータをHFC-32やHFC-152aと比較して示す。1)、2)

化合物 化学式                   GWP  Bp(K)   Tc(K)  

燃焼速度(cm/sec)          ISO燃焼性クラス
1234yf CH2=CFCF3         4      245.2   369.3     1.2                                      2L
1243yf CH2=CFCHF2                                            19.8                                     2
1243zf CH2=CHCF3                 251.7   389.7   14.1                                      2
1234ze CF3CH=CHF(E)  6     254.2   384.4                                                  2L
HFC-32 CH2F2                          650       221.5      6.7                                      2L
HFC-152a CH3CHF2               140        248.2     19.8                                     2

このうち冷媒として期待されるのはGWP が4でHFC-134aより99.7%低いR-1234yfであり、今年4月に米国EPAから最終的な認可を受けた。また、GWPが6と低く、エアゾール用途や発泡剤として期待されるR-1234zeは、燃焼速度のデータはないが、フッ素含有量からISO燃焼性クラスは2Lと推察できる。今年1月に米国EPAがその用途の承認を行い、米国ハネウエル社が2013年後半に商業プラント建設を決めている。いずれも日本と欧州では、すでに商品化されている。また、1243zfについては、HFC-134aとの混合溶媒についてGWPが150以下との記載がある。
商品化に向けた最近の特許としては、R-1234yfを使用した冷凍サイクル内でフッ化水素の発生を抑制し、冷凍サイクルに使用される部品の劣化を抑えて、長期間に渡って安定的に動作可能にするためにエタノールが提案されている。3)
また、ダイキン工業は、R-1234yfとHFC-32混合冷媒を使用した空気調和装置において、蒸発器として機能する熱交換器の除湿能力を確保することができ、再熱除湿運転の性能を向上させることができる装置の提案や4)HFO単一あるいは混合冷媒において冷媒量を減らす試みとしてマイクロチャネル熱交換器の提案などを行っている。5)また、R-1243zfを発泡剤として使用して、高kファクターを有する低密度断熱性熱可塑性発泡体の製造が提案されている。6)また、HFOが重合性であり、ポリマー化して析出することにより冷凍サイクル内で詰まることを防ぐため、ペンタエリスリトールおよびネオペンチルグリコールをそれぞれ炭素数7~9の脂肪酸を反応させたエステル化合物からなる冷凍機油を含有させてポリマーを溶解させる提案がなされている。7)

3、その他のHFO
ハイドロフルオロプロペン以外のHFOも提案されている。例えば、フッ素化プロピンC3HaF(4-a)の特許が公開されている。具体的にはCF3C≡CHであり、樹脂用発泡剤、熱伝達用流体または噴射剤などへの用途が考えられている。8)
また、シス-1,1,1-4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを相溶性の低いポリエステルポリオールと混合してイソシアネートと反応させ独立気泡のポリウレタン発泡体を製造する特許が公開されている。9)
Wallingtonらは、ヘキサフルオロシクロブテンHFCB、オクタフルオロシクロペンテンOFCPおよびヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンHFBDの塩素ラジカル、OHラジカルとの反応性、大気中での寿命およびGWP値を求めている。10)
結果は下表の通りである。
FT1
速度定数は下記の反応式から求めた。
FT2
反応は700Torr N2 or O2 中、295Kで行われた。
これから大気中の寿命を推算し、GWPを求めた。HFBDについては記載がないが、大気中の寿命から一桁台のGWPが予想される。

4、おわりに
ハイドロフルオロオレフィンHFOの実用化に向けて着実に進んでいるように思える。特に冷媒についてはかなり期待されているようである。また、発泡剤についても開発が活発である。但し、二重結合を有しているので金属などとの反応性、重合性などの問題点があり、そのための対策も提案されている。しかしながら溶媒としての可能性は現時点では明らかではないようである。オゾン層破壊、地球温暖化と次々に課題を突き付けられてきたフルオロカーボン、HFOが救世主のひとつとなることを期待してやまない。

文献・特許
1) J. Steven Brown et al International Journal of Refrigeration 33(2010) 235
2) Kenji Takizawa et al J. of Hazardous Materials 172(2009) 1329
3) パナソニック 特開2011-016930
4) ダイキン工業 特開2010-101588
5) ダイキン工業 特開2011‐94841
6) アーケマ 特表2010-522816
7) パナソニック 特開2011-85275
8) セントラル硝子 特開2011‐38054
9) デュポン 特開2010‐534253
10)T.J. Wallington et al Chemical Physics Letters 507(2011) 19-23

「イオン液体」

2011年9月26日

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、はじめに
イオン液体(ILs)については、アニオンとして安定性が高いと言う理由でフッ素系ILs が有望視されている。しかし、期待されながらなかなか大きな市場を築けない状況が続いている。粘度の問題、価格の問題などがネックになっているようであるが、開発は精力的に進められている。また、今年1月には、第1回イオン液体討論会が開かれており、学会としての活動も活発化してきた。ここでは、主に文献、特許情報から最近の開発状況をまとめてみた。

2、イオン液体溶媒
まずはILsを溶媒として用いた酸化触媒の進歩についての総説を紹介する。1)有機金属錯体はILsによく溶ける。従って、2相触媒反応の場合、有機金属錯体触媒はイオン液体中に留まり、生成物相から分離できる。こうした系で酸化、水素化、ハイドロシリレーション、オレフィンのオリゴマー化などの反応においてILsが用いられている。特にMn(III)ポルフィリン錯体を用いたオレフィンのエポキシ化がよく知られている。本論文では、スルフィド、アルコール、オキシム、オレフィンの酸化反応、ケトンを過酸で酸化してエステルにするBaeyer-Villiger反応やニトロトルエンの酸化、カルボニル化反応、システインの酸化などの特殊な酸化反応が取り上げられている。その中で一例としてスルフィドの酸化反応を紹介する。Scheme1にILs中でのジベンゾチオフェンの酸化反応を示す。種々のILsを用いた結果をTable3に示す。触媒を用いた場合、ILsが触媒を取り込み、反応を促進すると考えられる。ILsの種類によっても大きく影響を受け、[bmim]BF4と触媒の組み合わせが最も高い収率を与えた。また、Ilsが存在しない場合は4%の収率とのことである。ここで、[bmim]は1-ブチル-2-メチルイミダゾール、[omim]は1-オクチル-2-メチルイミダゾールで、それぞれ[C4mim]、および[C8mim]と表現することもある。
FT1
ILsは、CO2をよく溶かし、捕捉剤として期待されている。Kangらは、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート[amim][PF6]へのCO2の溶解性を調べた。2)アルキル基のブチル基[C4mim]とノニル基[C9mim]についてCO2の圧力と溶解性の関係をFig.3に示す。293.15Kと298.15Kと温度を変えて測定し、ブチル基では過去のデータと一致し一つの曲線上にあることが分かった。また、ノニル基と長鎖のアルキル基にすると異なる曲線を描くことも分かった。このデータをグループ寄与非ランダム格子流体状態方程式(GC-NFL EoS)と関連付け、高圧力、長鎖アルキル基での予測が出来ることを確認している。
FT2
3、イオン液体の応用展開
ILsの応用展開も盛んである。リチウム電池、電気二重層キャパシタ、色素増感太陽電池の電解液として検討されているのをはじめとして、バイオマスエネルギーへの適用、光化学への適用など応用範囲は広がりを見せている。
後藤らは、ILsを用いたレアアースの高度分離プロセスを報告している。3)ILsを用いる最大の利点は金属の液膜分離ができることである。液膜法とは、抽出分離の正抽出と逆抽出の一連の操作を、液膜をはさんだ両界面で同時に行える非常に簡略化された分離法である。ILsの揮発性が極めて小さいこと、即ち蒸発による膜液の損失が抑えられることは膜の安定化に有利であり、特に高温操作が多く、また液膜相と気相が隣接するガスの液膜分離ではその効果は顕著である。ILsは有機溶媒や水に比べて高い粘性や表面張力を示すため、圧力勾配に耐えて支持体の細孔に安定に保持されやすいことも安定化の大きな要因である。そして、分子設計に基づいて物性の異なる液体を合成できるので目的分子を輸送するのに適したILs相を創成することができる。
ILsの不揮発性、難燃性を利用した電解液としての可能性を述べた文献を紹介する。4)表1にいわゆる新エネルギーとして期待されている電気化学エネルギーデバイスの構成要素を示す。このいずれについてもイオン液体が検討されているが、まだ実用化には至っていない。粘性が高い、濡れ性が低い、コストが高いの3点が課題である。粘性についてはイミダゾリウム系ILsが低いが、 熱安定性や電気化学安定性の点で優れている脂肪族第四級アンモニウムイオンILsの低粘度化が検討されてきた。その結果、アニオンとしてBF3(C2F5)やCF3CONSO2CF3のような非対称性のアニオンを用いると粘度が低くなることがわかった。濡れ性については、現在使われているポリオレフィンセパレータにおいて課題であったが、例えばシリカナノ粒子を含有させたポリオレフィン多孔質をセパレータとして用いると濡れ性が改善されるなどイオン液体に適したデバイスの開発により解決の見通しが得られている。コストについては、実用化されれば量産効果などで解決できるとされている。また、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(フルオロスルホニル)イミドが低粘性で高いイオン伝導度を有しており、他の殆どのイオン液体電解液中で充放電不可能な黒鉛電極の充放電が可能であるとの報告もある。5)
FT3
次にILsとポリマーを用いた材料開発についての文献を紹介する。6)まずは、ILsとポリマーが完全相溶するケース。その場合モノマーと架橋剤をイオン液体中に溶かして重合するとILsを担持したイオンゲルが得られる。例えばPMMAと[C2mim][ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド(NTf2)]との組み合わせでのイオンゲルは300℃の耐熱性を有する。また、下図のプロトン伝導性ILsとこれを相溶するポリマーを併せ用いると、室温から100℃以上と広い温度範囲で無加湿燃料電池発電が可能になる。
FT4
また、アクチュエーターとしての特性が電極膜の導電性が不足して十分に出せない対策として、カーボンナノチューブとイオン液体を含む膜を形成後に、カーボンナノチューブに対してドーピング作用を有する有機分子を含む溶液を滴下、乾燥することによって解決した特許が公開されている。イオン液体としては、[C2mim]][BF4]が用いられ、高純度単層カーボンナノチューブおよびPVDF/HFPポリマーと混合して膜を形成、有機分子を含む溶液はF4TCNQのCS2溶液が例示されている。7)
さらに、有機EL等の発光表示装置にイオン液体を用いて、有機溶媒を用いた場合の揮発性による発光機能の低下、可燃性などの課題を克服し、発光輝度も向上するという特許が公開されている。イオン液体としては、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)( TMPA-TFSI)が例示されている。8)

4、おわりに
イオン液体がグリーンケミストリーの目玉として登場してから十年以上を経ている。この間、開発は留まるところを知らず進んでおり、基礎的にも応用面でも多大な情報蓄積がなされていて益々大きな可能性が秘められていることは確かである。さらに、カチオン、アニオンの多様性とその組み合わせにより、今後も可能性が益々広がっていくことは間違いないと考える。但し、本文でも述べた課題があり、その結果大きなビジネスには繋がっていない。今後は実用化に向けた取組が功を奏し、グリーンケミストリーの目玉と言う位置づけが具体化されることを期待してやまない。

文献・特許
1) F. E. Kuhn et al Coordination Chemistry Reviews 155(2011) 1518-1540
2) Jeong Wong Kang et al Fluid Phase Equilibria 306(2011) 251-155
3) 後藤雅宏ら ケミカルエンジニヤリング2011年4月号 52-57
4) 松本一 現代化学2010年9月 45-49
5) 江頭港 ケミカルエンジニヤリング2010年10月号49-54
6) 渡邊正義 現代化学2010年9月号 50-53
7) アルプス電気 特開2011-78262
8) 大日本印刷 特開2011-91331

「膜分離技術」

2011年8月31日

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1、はじめに
今回の東日本大震災において、水の重要性が改めて浮き彫りにされた。また、21世紀になって、世界的な水不足、水環境の悪化が進行している。従って、持続可能な水資源の確保、水環境の保全・浄化は大きな課題となっている。その解決策として、膜分離技術が注目されている。一方、医療分野では、人工腎臓などに膜蒸留という分離技術が開発されている。ここでは、PVDFやPTFEを用いた膜分離技術について概説する。

2、工業用途
膜分離のうち水処理には精密ろ過・限外ろ過膜が用いられている。限外ろ過膜は孔径が数nmから10nm程度、精密ろ過膜は孔径が10nmから数μm程度で、いずれも分離、精製、濃縮、回収、除菌などに使用される。膜の開発には、膜素材と膜構造の設計が重要である。膜素材では、強度が高く、耐薬品性の高いPVDFが世界的に主流になりつつある。膜構造の設計には多孔質状の膜形態に加工することがポイントである。峯岸らはPVDFの中空糸膜モジュールを開発した。1)2)用途により膜の種類は下表に示す3種類あり、純水透水性能と細孔径が異なる。
下図に示すように清澄水用膜HFMは高い不可逆ろ過抵抗を示す。これは細孔径が汚れ物質より十分大きいため、汚れ物質が内部に入り込み、物理洗浄で回復できないことによると考えられる。これに対し、表流水用膜であるHFSやHFUは表面に緻密で平滑な分離機能を有するため、汚染物質が細孔に侵入しにくく、優れた低ファウリング性を示した。また、HFSの物理的性質をTable2に示すが、強度が高いことが分かる。さらに塩酸、苛性ソーダ、NaOClなどに対する耐性も高く、十年以上の化学的耐久性を有していることが分かった。
FT1
小川らもPVDF製の中空糸精密ろ過膜を用いた加圧型と浸漬方の大型モジュールを開発し、ランニングコスト削減を実現したと報告している。3)PVDF膜は、製膜方法によって膜構造は大きく変わり、膜性能や耐久性も変わる。製膜方法として、高温で融解させた均一な高分子溶液を冷却させることによることで相分離を起こさせる熱誘起相分離法(TIPS)を用い、シームレスネットワーク構造のPVDF中空糸膜を開発した。その膜モジュールの仕様を下表に示す。機械的強度が高く、耐薬品性に優れ、長期間安定して使用可能であり、上水用途でも10年を超える実績を有するとしている。
FT2
さらに、クレハはPVDF系樹脂を主体とする親水性多孔質膜を開発している。4) PVDFとして2種類の分子量の異なる樹脂を用い、さらにポリビニルアルコールおよび可塑剤を混合して二軸押し出し機で中空糸状に押し出し、水浴中に通し、さらに、ジクロロメタン中に浸漬して、可塑剤を抽出し、乾燥して多孔質中空糸を得た。機械的強度、膜としての浸透ぬれ張力が高く、水処理膜として使用した場合に1.優れた耐薬品性、2.高い耐久性、3.優れた耐汚染性により長期間の使用に耐えるので、特に河川水、酪農廃水(牛、豚などの糞尿を含んだ廃水)、工業廃水、下水等の水処理用として用いられるとしている。
また、アルケマは、従来は膜分離活性汚泥法(MBR)との複合系としての下水処理用途が中心であったが、さらに口径の小さな限外ろ過膜分野の用途展開を推進し、上水用途への展開を進めていく。また、耐薬品性と透水性を両立させたいというユーザーニーズに応えるため、親水性PVDFの開発も進めている。
Liらは、液体/液体、液体/固体分離におけるPVDF膜の製造と修飾についての総説を発表している。5)まずは、PVDFの結晶構造、熱安定性、耐薬品性が述べられ、次いでimmersion precipitationや熱的相分離を含むPhase-Inversion法を経由する膜の製造法が述べられている。また、PVDF膜のファウリング耐性改良のために表面処理(コーティング、グラフト、オゾン・プラズマ・UVおよびEB処理)やブレンド(ポリビニルピロリドン・ポリエチレングリコール・PMMAなどの親水性ポリマーの添加)による種々の親水性付与法が示された。結論として、PVDF膜の製造には結晶化工程が重要であり、PVDFの擬似結晶構造によるbi-continuousポア構造のような特殊な膜構造を形成させることがポイントであるとしている。また、ファウリング耐性改良については、親水性/疎水性のバランスだけではなく、膜の電荷やイオン強度、表面粗さ・ポアサイズ分布・ねじれ・厚みなどの構造性、あるいは溶質の性質、膜モジュールの形状などが影響することを結論付けている。
Wangらは、直接接触膜蒸留で用いられる中空繊維膜モジュールの性能改善方法について報告している。6)膜蒸留の性能は、膜とモジュールの特徴に依っているが、PVDF中空繊維をプラズマ処理したもの、化学的処理をしたものとオリジナルのものから作製したモジュールを比較した。処理したものは、疎水性、機械的強度が増大し、ポア径およびばらつきも小さくなった。その結果、長期持続可能な流動とより高い水質につながった。また、化学的処理の方が性能は高かった。結果を下表に示す。
FT3
膜蒸留では、物質と熱の流れが膜を通して同時に起こる。理論的には、膜が加圧状態であればポア中の全圧力と膜の熱抵抗が変わり、膜の性能に影響する。Greyらは、直接接触膜蒸留(DCMD)実験を行って、膜の両側の絶対圧力を変えてその影響をみている。7)膜としては中空繊維および平面シート膜の両方を使用した。中空繊維膜は1~70kPaの圧力範囲で全く変形しない膜であり、平面シート膜はスポンジ様のPTFE活性層を目の粗い織物で支持した膜で、Fig.8に示すように、体積変化を起こし、活性層は減少した。その結果、15~39%の流量減少が起こった。また、耐熱性も低下した。中空繊維膜は圧力による影響はなかった。

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3、バイオ・医療用途
上記のPVDF多孔質膜をバイオ・医療関連用途への展開については文献や特許はまだ非常に少ない。その中で、東レは、微生物もしくは培養細胞の培養液を分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収するとともに未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を発酵培養液に追加する連続発酵装置を提案している。分離膜として平均細孔径が0.01μm以上1μm未満の細孔を有するPVDF多孔性膜を用いている。8)多孔質膜の作製法は次の通り。PVDF樹脂のジメチルアセトアミド原液を25℃の温度に冷却した後、あらかじめガラス板上に貼り付けて置いた、ポリエステル繊維製不織布(多孔質基材)に塗布し、直ちに水/DMAC(25/75)組成を有する凝固浴中に浸漬して、多孔質基材に多孔質樹脂層を形成させ、その後、ガラス板から剥がし、熱水中に浸漬してDMCを除去した。低い膜間差圧で濾過処理しながら、長時間にわたり安定して高生産性を維持する連続発酵装置であり、酵母を使ってL-乳酸を製造している。
また、医療用途への展開も殆ど見当たらないが、鈴木らは、膜蒸留技術に着目し、新しい人工腎臓治療開発の基盤技術構築のための基礎検討を行っている。彼らはポリプロピレン膜人口肺を研究用に改良して実施しているが、PVDFやPTFEの可能性にも言及している。9)

4、おわりに
PVDFやPTFEの多孔質膜を用いた膜分離については水処理を中心に工業用途において盛んに行われており、高強度、高耐薬品性、高耐ファウリング性などの優れた性能により今後益々、重要な位置を占めていくと思われる。また、バイオや医療用途については、まだ始まったばかりであるが、上記の優れた特徴を生かしていけば大いに期待されると考えている。

文献
1) 峯岸進一 未来材料 9(6) P-40 2009
2) 花川正行、峯岸進一 繊維と工業 65(3) P-92 2009
3) 小川高史 膜(MEMBRANE) 36(1) P-44 2011
4) クレハ WO2006/001528 
5) Abed K. Li J. of Membrane Science 375(2011) 1-27
6) Rong Wang et al J. of Membrane Science 369(2011) 437-447
7) Stephen Grey et al J. of Membrane Science 369(2011) 514-525
8) 東レ 特開2008-237213
9) 鈴木聡他 東女医大誌 76(10・11)P-410 2006