「フッ素ドープ酸化スズFTO」

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

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1、はじめに
フッ素ドープした酸化スズ(FTO)は、スズをドープした酸化インジウム(ITO)に代わり安価な透明導電膜として注目されている。そして、化学的に安定で、機械的強度が高く、高温耐熱性を持ち、物理的剥離にも強く、オプトエレクロニやタッチスクリーン、色素増感型太陽電池、薄膜太陽電池、キャパシタ、省エネ窓をはじめとするさまざまな用途が考えられている。FTOの課題は光電気特性の向上、つまり導電率と光透過率の両立にある。ここでは、最近の文献からその課題解決法として提案されている、アニール処理法、複合層の形成法についての開発状況を述べる。

2、アニール処理
FTO膜は、比抵抗が10-4Ω・㎝台まで到達し、導電性の高い膜が比較的容易に得られる反面、逆に透過率の高い膜は得にくい傾向があった。これはFTO膜ではキャリア電子密度を比較的容易に増大することが低抵抗化を可能にしているのであるが、キャリア電子の増加は光学吸収を招くため光透過率は低下してしまうためである。低抵抗化のためにはアニール処理(熱処理)が広く行われている。アニール処理によりキャリア密度を高めることにより低抵抗化を図ると、光学吸収を招き、光透過率が低下してしまう。アニール処理によりキャリア電子の移動度を上げることができれば透過率を維持したまま低抵抗化が図れる。そのポイントは酸化錫の酸素の脱着にあり、アニールを500℃で行い、その後再吸着を防ぐべく280℃以下まで温度を下げることにより、光透過率と低抵抗化を両立させることなどが提案されている。

アニールは高温で長時間行われるとFTO膜が劣化するのでレーザーを用いたアニール法が開発されている。Ming Zhouらは、AZO(アルミニウムドープZnO)/FTO膜を作製し、532nmの波長をもつナノ秒レーザーを照射して、種々の導電率(シート抵抗値7.8~5.7Ω/□)と光透過率(波長380-780nm範囲で80.3~83.6%)の組合せを実現した。1) 

3、複合膜
K. Ravichandranらは、導電性と光透過率の両立のために、FTO/AZOの二重層を検討している。2)FTO/AZOの厚み600nmの比率を1/5、1/2、1/1、2/1、5/1と変えて検討している。導電率については下表の通りであり、光透過率についての波長依存性は下図の通りである。比率が5/1の時、9.141×10-3Ωcm、可視光領域では平均して85%の光線透過率であった。また吸収端がブルーシフトしていることが分かる。
FT1

F. I. Chowdhuryらは、FTO表面をエッチングして反射を抑え、光透過率を向上させる提案を行っている。3)下図に示す、表面を長方形あるいはピラミッド形にエッチングすることが試みられ、前者は1~2%(81~82%)、後者は5%(85%)向上する結果を得ている。
FT2

B. Subramanianらは、FTO膜上にZnO膜を形成させ電極とし、対極にPt薄膜をFTO上に形成させた電極を用い、色素増感型太陽電池を作製し、光電変換効率3.02%を得ている。4)

Jianjun Zhangらは、FTO表面を粗面化と同時にAZO膜を形成させて透過率を上げ、色素増感型太陽電池として、光電変換効率を2.41から2.91%に向上させた。5)

Guangwu Yangは低密度ZnOミクロロッドをFTO上に配列させることに成功した。6)また、Youfa ZhangらはZnOのナノロッドをFTO上に配列させ、表面積を増大させた。7)いずれも将来のエレクトロデバイスとして期待されるとしている。

Sang Jae Kimらは、下記に示すFTO上にTiO2ナノロッドの膜を水熱法で作製し、スーパーキャパシタに適用した。8)ナノロッド膜は核形成後成長し正方晶ルチル相のロッドとなった。膜は均一で高密度であり、キャパシタの電極性能は、5mV/secでスキャンした場合の比容量85μF/㎝、1000サイクル後に80%の容量が維持される高性能を示した。
FT3
C.D. Lokhandeらは、FTO上にポリアニリン膜を作製し、スーパーキャパシタに適用した。9)水の接触角が29度と親水性を示し、5mV/secでスキャンした場合の比容量値546F/gを得ている。

Jiang-Jun Janらは、FTO上にCoSナノチューブを配列させ、スーパーキャパシタに応用している。10)性能としては、0.5A/gで比容量値660F/ gを得ている。

4、おわりに
透明電極として使用されているITOはインジウム主体の化合物であり、コストが高い。その代替としてフッ素を数%ドープしただけのFTOが期待されている。光電気特性を向上させるべく、単独ではアニール法や表面粗面化法が開発されている。また、他の導電性化合物との複合化が盛んに行われていて、太陽電池やキャパシタへの応用展開が進行している。今後に期待したい。

文献
1) Ming Zhou et al Applied Surface Science 265(2013) 637-641
2) K. Ravichandran et al Superlattices and Microstructures 64(2013) 185-195
3) F. I. Chowdhury et al Energy Procedia 42(2013) 660-669
4) B. Subramanian et al Electrochimica Acta 137(2014) 131-137
5) Jianjun Zhang et al Materials Letters 130(2014) 75-78
6) Guangwu Yang Materials Letters 90(2013) 34-36
7) Youfa Zhang Materials Letters 131(2014) 178-181
8) Sang Jae Kim et al J. of Alloys and Compounds 561(2013) 262-267
9) C.D.Lokhande et al Chemical Engineering J. 223(2013) 572-577
10) Jiang-Jun Jan et al Applied Surface Science 311(2014) 793-798

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