最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。
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1、はじめに
希土類は17種類の元素からなり、いわゆる31種類のレアメタルに属する。その埋蔵量は原子によって異なり、磁石やレーザー材料に使われるネオジウムは0.0022%で亜鉛と同程度の埋蔵量である。また、ユーロピウムも0.0010%で比較的多い。1)希土類はフッ素或いはフッ素化合物と種々の錯体を形成し、有用な材料としての可能性が紹介されている。本稿では、最近の文献からその一端を紹介する。
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2、Ln(OC6F5)32)
C6F5O基はランタニド錯体の蛍光発光性を高める。錯体の合成法は下記の通りである。ベンゼンやトルエン溶媒を用いた場合は、溶媒和しない錯体が高収率で得られるが、エーテルやメタノール中では溶媒和した錯体となる。
上記(1)-(3)は140℃で、(4)-(9)は60℃で脱溶媒し、150℃で分解してLnF3になる。これはC6F5のオルト位のFと金属原子との反応が起こるからである。耐熱性を上げる試みとして、フェナントロリンを導入する方法が行われ、300℃まで分解しないことが分かった。また、ピリジンやビピリジルの導入も耐熱性を向上させた。
それらの光ルミネセンススペクトルを下表に示す。メタルイオンの発光に加えて405-415nm範囲の配位子のピークが観察された。
3、NaYF4
最近、Er+をドープしたNaYF4が最も低いフォノンエネルギーマトリックス物質であるということで注目されている。但し、アップコンバージョン発光は不十分というレベルである。Han YuらはNaYF4にErとYbをドープした物質に下表に示すSnの量を変えて導入した系においてアップコンバージョン発光を高め、減衰時間を減少させる検討をしている。3)
その結果、下記に示すようにSnが3mol%導入された系Sn3でSnのない場合に比べて7倍のアップコンバージョン発光強度が得られ、有望であるとしている。
また、Bing YanらはコドープしたNaYF4:Ln3+(Ln=Eu(2mol%)、Yb/Er(20/2mol%)、Yb/Tm(20/2mol%))を合成し、イオン液体([C6mim][Cl])中に分散させ、ゲル化しやすい中性多糖アガロースを用いて均質な発光ゲルを作製、アップおよびダウンコンバージョン発光を実現した。4)
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4、希土類含有酸化フッ化物ガラス
米沢らは新しいフッ化物イオン導電体として、二元系希土類金属酸化物フッ化物を検討し、高いイオン伝導性があることを見出した。5)そして、Nd2Eu2O3F6が定比組成でありながらイオン伝導性を示すこと、その合成プロセスの中で、ガラス状の物質を得、その分析から新規希土類酸化フッ化物ガラス系を比較的簡単なプロセスで得ることができることを見出した。しかし、LnF3-SiO2-Al2O3系では高温時での加水分解の進行、フッ酸と炉材との反応による不純物の混入などが起こり、再現性が困難であった。そこで、SiO2の代わりにGeO2を導入して解決できた。下図にNd3-AlF3-GeO2の系におけるガラス形成ダイアグラムを示す。白抜きの○がガラスで●は結晶である。
上図から広い範囲でガラス化が可能であり、最大70%のNdF3を含むガラスが可能であることが分かる。フッ化物イオンを含むバイナリアニオン系ガラスが発色性のあるNdを含むため、酸化物ガラスに比べて小さいフォノンエネルギーが期待でき、フッ化物ガラスに比して熱的に安定であるという特徴を有している。ここではさらに他の希土類系での確認やバイナリアニオン系に希土類をコドープすることにより発光強度の改善などが検討されていて、本研究をベースにして応用展開が期待されるとしている。
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5、YF3ナノ中空糸
Xiangting Dongらは、YF3:Eu3+ナノ中空糸を作製し、発光特性を調べた。6)合成は、電界紡糸により得られたポリビニルピロリドン(PVP)/[Y(NO3)3+Eu(NO3)3 ]ナノファイバーを焼成して作製したY2O3:Eu3+中空糸をNH4HF2でフッ素化して行った。下図にその工程を示す。
YF3:Eu3+ナノ中空糸は直径197±34nmの中空が中心の構造を有している。394nmUV照射下では、Eu3+イオンの5D0→7F1遷移に基づく587nm、593nmに赤色発光ピークを示した。このことはEu3+イオンがYF3結晶の中でC2対称であることを示唆している。発光強度はEu3+イオンの濃度とともに増大し、9mol%の時に最大になった。
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6、おわりに
希土類フッ素化合物について、最近の文献から紹介した。発光性を中心に興味ある性質を示しており、また多種多様な化合物の可能性が示されていた。今後重要な分野になっていくと考えている。
文献
1) 長谷川靖哉 化学工業 2014年5月号 20-25
2) A. Maleeve et al J. of Organometallic Chem., 747(2013) 126-132
3) Han Yu et al J. of Solid State Chem. 207(2013) 170-177
4) Bing Yan et al Spectrochimica Acta. Part A :Molecular and Biomolecular Spectroscopy 121(2014) 732-736
5) 米沢晋 Electrochemistry 81(2013) 710-716
6) Xiangting Dong et al J. of Fluorine Chem. 145(2013) 70-76