Archive for the ‘新エネルギー’ Category

1. 新エネルギー

金曜日, 12月 25th, 2009

1-4 二次電池
 最近、地球温暖化への対応の有力な候補である電気自動車に関する記事が多い。将来はガソリン車に代わり、電気自動車の時代が来るとまで言われている。その鍵を握るのが充電可能な二次電池であり、現在最も期待されているのがリチウムイオン二次電池である。その理由は下表に示す高い電圧、大きいエネルギー密度と出力を有するからである。

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 現在のハイブリッド電気自動車は、ニッケル水素二次電池がメインであるが、トヨタがリチウムイオン二次電池(LiB)の導入を決め、今後の主流になっていくことは間違いない。その他、携帯電話やパソコンなどの電子機器にはリチウムイオン二次電池が使われている。
  まずは、LiBの放電と充電の原理を述べる1)。下図の左側が放電状態で、負極である炭素材の層間にあるリチウムイオンが、セパレータを介してリチウムの化合物である正極材料の中に移動することによって放電電流が流れる。右側は充電状態で、リチウムの化合物である正極材料の中に存在するリチウムイオンが、セパレータを介して負極である炭素材の層間に移動することによって充電される。

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 このLiBにはフッ素が重要な役割を演じている。中でも電解液は、フッ素はなくてはならない存在である。電解液は電解質を非水系溶媒に溶かしたものである。溶媒は炭酸プロピレンが主に使用されている。
電解質としては現在LiPF6が使用されている。それは下表の通り、LiPF6が高い電気伝導度と安全性を有するからである。溶媒として、ガンマブチルラクトン(GBL)や炭酸プロピレン/ジメチルカ―ボネート(PC/DMC)系も検討されている。

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 また、LiPF6は加水分解性があるので、改良検討されLiPFm(C2F5)6-mなどが開発されたが、コスト面でまだ使用されていない。
 フルオロエチレンカーボネート(FEC)が、電解液の添加剤として使用されている。理由は、負極表面に長期にわたり良好な皮膜が形成され、電解液の劣化を抑制し、蓄電池の長寿命化に効果があるからである。

 この一年のリチウム二次電池に関する情報を以下に述べる。
まずは、イオン液体を電解液に用いる動きである。第一工業製薬は、ビスフルオロスルフォニウムイミドN(SO2F)2-(FSI)系イオン液体を電解質に用い、既存の有機溶媒系並のLiBの特性を実現した。イオン液体は、有機溶媒に比較して沸点がはるかに高くほとんど揮発しないなどの安全性に優れているため、LiBの電解質として実用化されれば、自動車などへの搭載が一気に進むと考えられる2)。メルクは、イオン液体のフルオロアルキルホスフェートFAPでLiB材料市場に参入する。FAPは疎水性があり、加水分解してHFを出すことがなく、電池システムとして安全性が高まる。特許的には、PF3(C4F9)3-が提案されている3)。日本カーリットは、イオン液体として、下式に示すような1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用い、難燃性、低粘性及び高安定性を実現し、安全性が高く、高電導性のLiB用電解液を提案している4)。ここでRがC2H5、TFSIはN(SO2CF3)2である。

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 また、イオン液体を用いると、エネルギー密度は高いが爆発などの危険性の高いリチウム金属を用いたリチウム二次電池でも安全性が確保される可能性があり、その開発が進んでいる。
次いで、関東電化工業は、2010年5月をめどに、電解質向け添加剤のFECの生産能力を現状比2.5倍の年250トンに高めるとしている。また、三菱化学では、80年代から着手している電解液はすでに25%のシェアを確保、30%超まではあと一歩の状況。同社の強みは豊富な添加剤を揃えていることでユーザーニーズに合わせて細かなカスタマイズが可能。溶媒、電解質、添加剤の組み合わせで差別化を図る。2010年1月には年産能力を2500トン増の年8500トン体制に増強する。さらに、ダイキン工業は、FECの高純度品の開発を完了し、サンプル出荷を始めた。韓国などの電池メーカーが評価試験に入り、2010年春には年100トン規模で量産に入る。同社はまた、HCF2CF2CH2OCF2CF2H、ヘキサメチルシクロトリシロキサン及びトリメチルフルオロシランからなる非水系電解液を提供し、低温特性、サイクル特性およびレート特性を向上させるとともに安全性を向上させることができるとの特許を公開している5)。
正極の開発も活発である。九州大学の岡田重人准教授は、Li2CoPO4F正極材を新規に開発した。この系はレアメタルフリーではないものの、コバルトとフッ素の導入によって放電電圧を3.3Vから5Vに引き上げることに成功した。このため、Li2CoPO4F正極の特性改善、低価格化を目指して三菱重工業・九州電力総合研究所などと共同で、NEDOプロジェクトの「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/要素技術開発プロジェクト」のなかのポストオリピン(LiFePO4 )正極の1つの有力候補材料として開発を進めている。
電極のバインダーについては、正極は安定性の高いPVDF系バインダーがほとんどを占めているが、最近、負極用として開発された非フッ素系バインダーが正極用として検討されており、PVDFの市場に入り込む気配が感じられる。

 経済産業省は、LiBの開発を促進するための環境整備に乗り出す。産総研関西センター内に公的評価ラボとしてリチウムイオン電池材料評価センター(LIBTEC)を新設する。今秋にも正極、負極、セパレーター、電解質の主要4部材のメーカーを中心とする運営組織を立ち上げ、2010年から共同利用を開始する。さらに電池メーカーにも協力を呼びかけ、将来は電池材料の安全性や性能についての標準的な評価方法の確立を目指す。
以上、リチウム二次電池についてはHEVへの本格的搭載が間近であり、生産量の大幅な増大に伴い、フッ素系材料市場の拡大が見込まれている。このような情勢の中、さらなる性能向上、安全性の向上を目指した開発競争が熾烈になっていくことが予想される。

参考資料
1) http://www.nec-tokin.com/product/me/chisiki/li7.html 
2) 第一工業製薬 特開2009-26542
3) メルク 特開2001-233887
4) 日本カーリット 特開2009-170279 
5) ダイキン工業 特開2009-163939

1. 新エネルギー

火曜日, 11月 24th, 2009

1-3 太陽電池
 太陽電池(Solar cell)は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器であり、一般的な一次電池や二次電池のように電力を蓄えるのではなく、光起電力効果により、受けた光を即時に電力に変換して出力する。主流のシリコン太陽電池の他、様々な化合物半導体などを素材にしたものが実用化されている。最近、色素増感型(有機太陽電池)が注目されている。
主 な用途は、電卓、腕時計、道路標識,街路灯、携帯電話の充電器などがあるが、何といっても重要なのは太陽電池を利用し、太陽光エネルギーを直接的に電力に変換する発電方式である太陽光発電である。導入費用は高めであるが、昼間の電力需要ピークを緩和し、温室効果ガス排出量を削減できるなどの特長を有し、低炭素社会の成長産業としての将来性を買われ、需要が拡大している。
 太陽電池の構造を下図に示す。1)

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 性質の異なる2種類(p型、n型)のシリコン半導体を重ね合わせたような形で、太陽光が当たると電子(-)と正孔(+)が発生し、正孔はp型半導体に、電子はn型半導体に集まる。この2つの半導体を電線で繋ぐと電流が流れる。
 太陽電池におけるフッ素系材料としては、その耐候性を利用した太陽電池の保護を行うバックシート、低屈折率性を利用した太陽光の透過性を向上させる反射防止膜、耐薬品性を利用した封止材へのコート、ITO(インジウム・錫酸化物)にフッ素をドープしたFTOなどがある。
 最近特に注目されているのが、バックシートであり、ポリフッ化ビニル(PVF)が非フッ素系も含めて最も高いシェアを有している。その他ETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体)フィルムも使用されている。しかし、しかし、これらの樹脂シートは、要求される耐候性、電気絶縁性、光の遮蔽性といった特性を満たすために、通常は厚さ20~100μmとする必要があり、重量面からさらなる軽量化が求められている。そこで、樹脂シートに代えて樹脂塗料を用いて同様の層を形成することが提案されている。例えば、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料である。2) 具体的には、テトラフルオロエチレンと炭化水素系ビニルエーテル(シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテルなど)との共重合体、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤を配合し、水不透過性シートの表面にエアスプレーで塗装する方法が提案されている。
 反射防止膜は下図に示すように高屈折率層と低屈折率層の多層膜で構成される。ここで、2aは低屈折率層、2bは高屈折率層、3は接着層、4は基材である。低屈折率層として屈折率の低いフッ素化合物が用いられている。 

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  低屈折率層として例えば、中空のシリカ微粒子とAa-O-(CH2)xa-Rf-(CH2)xb-O-Ab(ここでRfはパーフルオロアルキレン基、パーフルオロポリエーテル基、AaあるいはAbはアクリロイル基またはメタクロイル基、xa、xbは0~3 である)あるいはC6F13(CH2)2Si(OCH3)3をバインダーとした組成物をコーティングして硬化した層が提案されている。3)
 封止材へのコートとしては、水酸基含有パーフルオロポリエーテル主鎖化合物とイソシアネーと化合物からなるプレポリマーを合成し、さらに触媒を加えた組成物を枠材であるEvOH樹脂フィルム上に塗布して作製したものが提案されている。4)
 FTOは、上図の2枚の電極板に導電性が高く、耐薬品性が優れているフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜が用いられている。その膜形成法として、ガラス基板の上に塩化スズ(水和物)のエタノール溶液とフッ化アンモニウムの飽和水溶液の混合溶液を、400℃に加熱したガラス基板上に噴霧することが行われている。5)この場合、下図に示す色素増感型太陽電池において特に重要である。
 色素増感型太陽電池のセル構造を下記に示す。6) 透明電極と対極の間をヨウ素レドックス系電解液で満たした構造である。透明電極上にTiO2などの多孔質膜を形成させ、これに増感色素を担持させる。光が照射されると、増感色素が光吸収して励起状態になり、励起された電子はTiO2の伝導帯に注入されて対極へ運ばれ、電流として取り出される。酸化状態になった色素は、電解液中のI-によって還元され、またI-はI3-になり、対極上で還元されてI-に戻り、セルとして機能する。

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   色素増感型太陽電池の電解液には極性溶媒が使われているが、揮発性であることが課題で、その対策として揮発しないイオン液体が検討されている。イオン液体は例えば下記の構造の有機系常温溶融塩で、アニオンにフッ素系を用いると安定性が抜群に向上する。

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文献特許
1) http://www.film-sheet.com/topics/32.html
2) ダイキン 特開2007-35694
3) ブリヂストン 特開2005-183546
4) 東海ゴム工業 特開 2008-226615
5) 田辺信夫他 工業材料53(3) 56 (2005)
6) フジクラ技術104号p38 2003

1. 新エネルギー

金曜日, 10月 16th, 2009

1-1 はじめに
鳩山首相は2020年までに地球温暖化ガスを1990年の25%まで削減すると発表し、国連でも演説して世界に向けて宣言した。地球温暖化ガスの大半は炭酸ガスであり、それは化石燃料によるエネルギー創出により発生する。1997年の京都議定書において地球温暖化問題が世界レベルで議論されてから特に化石燃料に代わるエネルギー、所謂新エネルギーの開発が本格化し、着々と実用化されている。この新エネルギーとは、風力発電、太陽光発電、地熱発電、燃料電池、二次電池などのことで、それぞれに開発が進み、大きな産業になりつつあり、今後最も期待される分野の一つである。
フッ素はこの中で、燃料電池、二次電池、太陽光発電における材料として期待されている。ここではこの三つの新エネルギーにおけるフッ素の役割と最新の情報を述べていく。第一回の2009年10月号として、燃料電池を取り上げ、11月には、二次電池、12月には太陽光発電を取り上げていくこととしたい。
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1-2 燃料電池
燃料電池は下図に示すとおり、水素と酸素との反応により水が生成する時のエネルギーを電気エネルギーに変えて利用する。つまり、水の電気分解の逆の原理である。詳しくは水素が電極(水素極)でプロトンになり、電解質を通って他方の電極(空気極)に到達して、そこで空気中の酸素から変化していた酸素イオンと反応して水が生成する際のエネルギーを電気として取り出し利用すると言うわけである。

燃料電池には、電解質の種類により、リン酸型、溶融塩炭酸型、固定酸化物型、固体高分子型(PEFC)などがある。この内、常温から130℃の低温で使えるPEFCは、電解質として有機のイオン交換膜を使い、家庭用、携帯用、自動車用として適している。しかし、現状ではコストの壁が高く、計画通りには進んでいるとはいえない。例えば当初、2007年に本格的に立ち上がると言われていたノートパソコンなどの携帯用は、未だに立ちあがっていない。また、自動車用もめどが立っておらず、各社2020年ごろの立ち上げを目指していると聞く。それでも今年2月に開催された「国際燃料電池展」は盛況であり、関心の高さは衰えていない。その中で、家庭用燃料電池が発売され、電気エネルギーと熱エネルギーを合わせた80%以上の効率の高さが魅力となって、今後市場が拡大していくことが期待されている。
フッ素はこのPEFCにおいて、固体電解質としてパーフルオロカーボンスルホン酸PFCSA、その支持体としてポリテトラフルオロエチレンPTFE膜、触媒のバインダーとしてPTFEあるいはポリフッ化ビニリデンPVDF、さらには将来の電解液としてイオン液体などとして使用されている。
現在、電解質として用いられているPFCSAタイプの高分子電解質膜がプロトン伝導を発現するためには、水分が必要なために加湿が必要である。その手間はかなりの負担であり、無加湿での検討が試みられている。例えば、電解液にイオン液体ジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネートを用いることにより室温から140℃まで無加湿で運転できた。また、PFCSA膜を利用した低温作動電池では、電極、特にカソードでの発電によって生成された水(生成水)を利用して無加湿化ができた。その場合、電極内でのガス拡散不良を防止するために、撥水材であるPTFEを混合して、疎水性を与えた電極が多用されている。また、触媒層の触媒担体をフッ素系表面保護物質が吸着して水に濡れにくく、長期間安定に触媒物質を保持することやガス拡散層に撥水性多孔質フッ素樹脂を用いて、反応ガスの速やかな供給・除去を行う試みがなされている。
また、イオン交換容量が大きく、より電気抵抗が低いポリマーの開発も行われており、例えば下記のような複数のスルホン酸基を有するモノマーを合成し重合することが提案されている。
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さらに、フッ素系電解質膜と炭化水素系電解し膜の複合化により、メタノールクロスオーバー(メタノールを燃料とする直接メタノール燃料電池DMFCにおいてメタノールが電解質内を透過してしまうことで、フッ素系電解質では透過しやすいと言われている)の低減や発電時および開回路電圧(OCV)時の電解質膜の劣化低減などが図られている。また、高分子電解質膜のガス遮断性の問題と高分子電解質膜の化学耐久性(耐ラジカル性)の両者を同時に解決する高分子電解質膜として、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜が溶融圧着で一体化された固体高分子型燃料電池用ハイブリッド膜が提案されている。