1. 新エネルギー

1-3 太陽電池
 太陽電池(Solar cell)は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器であり、一般的な一次電池や二次電池のように電力を蓄えるのではなく、光起電力効果により、受けた光を即時に電力に変換して出力する。主流のシリコン太陽電池の他、様々な化合物半導体などを素材にしたものが実用化されている。最近、色素増感型(有機太陽電池)が注目されている。
主 な用途は、電卓、腕時計、道路標識,街路灯、携帯電話の充電器などがあるが、何といっても重要なのは太陽電池を利用し、太陽光エネルギーを直接的に電力に変換する発電方式である太陽光発電である。導入費用は高めであるが、昼間の電力需要ピークを緩和し、温室効果ガス排出量を削減できるなどの特長を有し、低炭素社会の成長産業としての将来性を買われ、需要が拡大している。
 太陽電池の構造を下図に示す。1)

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 性質の異なる2種類(p型、n型)のシリコン半導体を重ね合わせたような形で、太陽光が当たると電子(-)と正孔(+)が発生し、正孔はp型半導体に、電子はn型半導体に集まる。この2つの半導体を電線で繋ぐと電流が流れる。
 太陽電池におけるフッ素系材料としては、その耐候性を利用した太陽電池の保護を行うバックシート、低屈折率性を利用した太陽光の透過性を向上させる反射防止膜、耐薬品性を利用した封止材へのコート、ITO(インジウム・錫酸化物)にフッ素をドープしたFTOなどがある。
 最近特に注目されているのが、バックシートであり、ポリフッ化ビニル(PVF)が非フッ素系も含めて最も高いシェアを有している。その他ETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体)フィルムも使用されている。しかし、しかし、これらの樹脂シートは、要求される耐候性、電気絶縁性、光の遮蔽性といった特性を満たすために、通常は厚さ20~100μmとする必要があり、重量面からさらなる軽量化が求められている。そこで、樹脂シートに代えて樹脂塗料を用いて同様の層を形成することが提案されている。例えば、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料である。2) 具体的には、テトラフルオロエチレンと炭化水素系ビニルエーテル(シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテルなど)との共重合体、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤を配合し、水不透過性シートの表面にエアスプレーで塗装する方法が提案されている。
 反射防止膜は下図に示すように高屈折率層と低屈折率層の多層膜で構成される。ここで、2aは低屈折率層、2bは高屈折率層、3は接着層、4は基材である。低屈折率層として屈折率の低いフッ素化合物が用いられている。 

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  低屈折率層として例えば、中空のシリカ微粒子とAa-O-(CH2)xa-Rf-(CH2)xb-O-Ab(ここでRfはパーフルオロアルキレン基、パーフルオロポリエーテル基、AaあるいはAbはアクリロイル基またはメタクロイル基、xa、xbは0~3 である)あるいはC6F13(CH2)2Si(OCH3)3をバインダーとした組成物をコーティングして硬化した層が提案されている。3)
 封止材へのコートとしては、水酸基含有パーフルオロポリエーテル主鎖化合物とイソシアネーと化合物からなるプレポリマーを合成し、さらに触媒を加えた組成物を枠材であるEvOH樹脂フィルム上に塗布して作製したものが提案されている。4)
 FTOは、上図の2枚の電極板に導電性が高く、耐薬品性が優れているフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜が用いられている。その膜形成法として、ガラス基板の上に塩化スズ(水和物)のエタノール溶液とフッ化アンモニウムの飽和水溶液の混合溶液を、400℃に加熱したガラス基板上に噴霧することが行われている。5)この場合、下図に示す色素増感型太陽電池において特に重要である。
 色素増感型太陽電池のセル構造を下記に示す。6) 透明電極と対極の間をヨウ素レドックス系電解液で満たした構造である。透明電極上にTiO2などの多孔質膜を形成させ、これに増感色素を担持させる。光が照射されると、増感色素が光吸収して励起状態になり、励起された電子はTiO2の伝導帯に注入されて対極へ運ばれ、電流として取り出される。酸化状態になった色素は、電解液中のI-によって還元され、またI-はI3-になり、対極上で還元されてI-に戻り、セルとして機能する。

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   色素増感型太陽電池の電解液には極性溶媒が使われているが、揮発性であることが課題で、その対策として揮発しないイオン液体が検討されている。イオン液体は例えば下記の構造の有機系常温溶融塩で、アニオンにフッ素系を用いると安定性が抜群に向上する。

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文献特許
1) http://www.film-sheet.com/topics/32.html
2) ダイキン 特開2007-35694
3) ブリヂストン 特開2005-183546
4) 東海ゴム工業 特開 2008-226615
5) 田辺信夫他 工業材料53(3) 56 (2005)
6) フジクラ技術104号p38 2003