2-1、はじめに
エレクトロニクスは幅広い。新エネルギー(既出)やオプトエレクトロニクス(3章で述べる)もこの範疇にはいるが、ここでは半導体(1月)とフラットパネルディスプレイ(FPD)分野(2月)に限って最新のトピックスを紹介していきたい。
2-2、半導体
2-2-1、半導体製造工程におけるフッ素の役割
下表に示すようにフッ素は半導体の製造工程の中でフォトマスク製造・ウエハー処理工程、ウエハー処理組立工程において回路形成露光光源から始まり、エッチング剤、洗浄剤、レジスト、防塵フィルム(ペリクル)、配線形成用CVD原料などほぼ全工程において重要な役割を演じている。さらに半導体薬液容器・シール、半導体タンク・配管、エアフィルターなど周辺材料においてもなくてはならない存在である。最近では、超微細化技術としてArF液浸技術への転換が進んでいて、液浸に使用される水のレジストへの浸入を防ぐ保護コーティング剤としてフッ素ポリマーが使用されている。
エッチングガス、クリーニングガス、CVD用ガスとしての2008年の国内市場実績を下表に示す。今後は地球温暖化係数(GWP)の高いパーフルオロカーボン(PFC)は需要が減少し、NF3やフルオロオレフィン類が堅調に伸びていくことが予想される。さらに、エッチングガスとしてCH3F、C4F6、CF3Iなど、クリーニングガスとしてCOF2などGWPの低いガスが有望視されている。
2008年国内市場実績
液浸装置のモデル図を下図に示す。トップコートはレジスト膜上に形成し、レジスト材料の保護、レジストからの溶出成分、ポリアルキレングリコールやアミンなどを抑え、
表面エネルギーを低下させて水などをはじく機能を付与する。トップコート剤としては下記に示すフッ素を含有し、バルキーな基を有するポリマー(Ⅰ)あるいは(Ⅱ)が提案されている。1)2)
レジスト材料としては、撥液領域に充分な撥液性を付与する、アルカリ可溶性、現像時に親液領域に溶出されにくい、レジスト溶媒に対して高い溶解性、基板への塗布性が良好、感光性組成物を形成する他素材との高い相溶性などの条件を有する材料が望ましく、例えばCH2=C(Cl)COOCH2CH2C4F9/メタクリル酸/イソボルニルメタクリレート共重合体3)や下記の構造体が提案されている。
2-2-2、有機半導体
有機半導体としては下記に示すペンタセンが知られているが、フッ素原子の導入により十分に低いLUMOを示すことができ、電子輸送にすぐれた半導体として利用可能であることがわかり、ペンタセンの水素を全てフッ素に置換したパーフルオロペンタセンが注目されている。関東電化工業はパーフルオロペンタセンをベースとしたn型およびp型有機半導体材料を開発、太陽電池に適用し、変換効率10%を達成したと新聞発表した。
最近の文献特許からフッ素系有機半導体材料を紹介する。
まずは、下記の構造の含フッ素チオフェンであり、顕著なn型特性を示し、電子移動度は1.3×10-3cm2V-1s-1であった。5)
次いで、CF3C=O基を含有するチオフェン誘導体で、電子輸送性の優れた有機n型半導体であり、共役構造により分子同士のパッキング性に優れる。 α-フルオロケトン構造(-C(=O)-C(F)<)の導入により十分に低いLUMOを示す。6)
さらには、下記の構造の化合物で、優れたキャリア移動度を示した。7)
参考文献・特許
1)IBM 特表2008-532067
2)ダイセル化学 特開2008- 46515
3)ダイキン工業 特開2008-287251
4)信越化学 特開2008-304590
5)生産と技術 60(3) 73 2008
6)大阪大学、住友化学 特開2009-149613
7)旭硝子 特開2009-78975