フルオログラフェン

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/webmaga/index.html

1、はじめに
 今回は、最近益々研究発表が増えている「フルオログラフェン(FG)」について文献を中心にまとめてみた。尚、本メールマガジンでは2011年2月に同題で記述している。具体的には、最近発表された優れた総説を概説し、次いでこの2年間のその他の文献を紹介していく。
2、総説の概説。1)
 まずはFGの合成であるが、下図に示すようにフルオログラファイトの剝脱法とグラフェンのフッ素化法が挙げられる。

 FGの性質であるが、グラフェン格子にフッ素を導入するとそのコンテントにより電子的、光学的性質が影響を受ける。FGは青色領域で吸収があることから3.0eV以上の広いバンドギャップを有している。また、FTIRスペクトルで1112cm-1に強いピークがあることからC-F結合は半イオン結合である。さらにXPSスペクトルからFGの86%はC-Fで、12%がCF2、2%がCF3であることが分かった。C-F結合の強さは、Fコンテントが低い場合は49.6kcalと弱く、完全にフッ素化されると112.3kcalと強くなる。SEM、TEMからC1F1の格子定数は2.48Åで、グラフェンの2.46Åより大きい。これはフッ素化によりSP2結合からSP3結合が増えたことによる。化学的にはフッ素化グラファイトやPTFEと同様安定である。熱的にも安定で300℃~400℃で分解が始まる。400℃~600℃で分解して揮発性の低分子CxFyが生成する。FGの脱フッ素化はヒドラジン気体に曝したり、KIと150℃で反応させると起こる。さらに半イオン結合FGはアセトン中で下記の反応を起こし、共有結合GFになる。
2C2F(半イオン性)+CH3COCH3→HF+2C+C2F(共有結合)+CH3COCH3
 FGの親核置換反応は下図のようにN-、O-、S-、C-など多彩な反応が知られている。

FGの応用については、二次電池への応用が試みられている。リチウム硫黄電池のLiアノードに発生するポリスルフィドのマイグレーションを防ぐのに有効な電極セパレーター、Mg電池の有効なカソードとして検討されている。また、スーパーキャパシタの電極物資として有望。次いで、CF0.75までフッ素コンテントを上げるとアスコルビン酸や尿酸のセンサーとして高い感度を示す。また、ドーパミンやNADHの検出にも高い感度を示す。電子触媒としては、部分フッ素化FGが酸化還元反応の金属フリー触媒として有用である。さらに、有機スピントロニックデバイス、防錆やセルフクリーニングコーティング、微量分析質量分析器のデバイス、水と油あるいは有機溶媒の分離、多彩な気体分離、造影剤などがある。
3、その他の文献紹介
 S. S. Sreejakumariらは、フッ素化グラフェンオキシド(FGO:F含有量34.4%)とポリジメチルシロキサンとのコンポジット(60/40)を塗布して水の接触角173.7度、ココナッツオイルの接触角94.9度、接触角ヒステリシス4度を得た。2)
Shan-Peng Gaoらは、半分フッ素化されたグラフェンの平衡構造と安定性を調べた。3)構造としては椅子型、ボート型、ジグザグ型が安定であった。椅子型グラフェンはスピン偏極であり、ボート構造は間接的なバンドギャップ半導体でGWバンドギャップは5.147eVと計算された。
Ho Soak Parkらは、下図に示す高多孔性Rf基含有グラフェンエアロジルを合成した。87%の多孔性、14.4mg/cm3のバルク密度、下図に示す高機械的強度、さらには144度の高疎水性を得た。4)

Wei Feng らは、フッ素化グラフェンヒドロゲルを水熱処理法で合成し、スーパーキャパシタのバインダー/添加物フリーの電極として応用した。5)合成はグラフェンオキシドの還元後にHFでフッ素化した。Fコンテントは水熱処理温度により調整した。XPSやFTIR分析によりC-Fは半イオン結合であり、これはイオン伝導性に優れていることが分かった。150℃での水熱処理で行った場合が最も高い固有静電容量227F/gを得た。これをキャパシタに適用した場合、50.05kW/kgの電力密度と50A/gの電流密度が得られた。
 Xiangyang Liuらは、グラフェンベースの表面積を変えることができる多孔質物質を、フッ素化グラフェンのインターカレーションにより作製した。6)下図に示すようにジアミンの一端がフッ素化グラフェンと反応し、さらにもう一端がどう反応するかによって、ブリッジコンフォーメーション(a)、ループコンフォーメーション(b)、テールコンフォーメーション(c)の3種類の形が生じる。形の違いは表面積や多孔性に影響を与える。

下図に示すようにCO2の吸収速度においても違いが生じ、ブリッジ型をとるEDAやHDAのジアミンの場合吸収速度が最も大きい。

4、おわりに
 ここ数年の文献情報から、フルオログラフェンの開発は中国、チェコ、韓国などにおいて活発に行われていることが窺われる。グラフェンをフッ素化することにより熱的、化学的安定性が向上する。また、表面エネルギーが低いため、ポリマーとのナノコンポジットにより耐熱・耐薬品性・超撥水・撥油性などの機能が期待される。さらに、C-F結合は半イオン結合であり、イオン伝導性に優れ、電池やキャパシタの高性能化も期待される。さらにガスなどの吸着性にも優れるためセンサーなどにも期待できる。今後、益々開発が盛んになることが予想され、期待感が高まっていると言えよう。
文献
1)Demetrios D. Chronopoulos et al  Applied Materials Today 9(2017) 60-70
2)S.S.Sreejakumari et al Carbon 84( 2015) 207-213
3)Shan-Peng Gao et al Surface Science 635(2015) 78-84
4)Ho Soak Park et al Chemical Engineering Journal 269(2015) 229-235
5)Wei Fen et al Journal of Power Sources 312(2016) 146-155
6)Xiangyang Liu et al Journal of Colloid and Interface Science 478(2016)36-45

Comments are closed.