「フッ素系レジスト材料」

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。
http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201402/

1、はじめに
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としてはArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジスト膜を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの2重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)などが候補であり、検討が進められている。また、電子ビーム(EB)のような短波長の高エネルギー線を用いたレジスト材料は、マスク描画用途に適用されている。
半導体の市場は前年比2.1%増の2977億6600万ドルとなる見込みで、続く2014年は前年比5.1%増の3129億6000万ドルと初めて3000億ドルを突破する見通しである。1)半導体材料については、日本は世界の60%を占める。その中で、レジスト市場は12年、KrFが減少したことによって前年比微減の1140億円。今後g線やi線レジストは横ばいから減少で推移の見通し。液浸を含むArFレジストはプロセス微細化が進む結果、13年~17年にかけて年率11~12%増で推移。EUVレジストは16年ごろから市場が立ち上がるとみている。2)
レジスト材料においては、夥しい特許公報の公開が続いている。本稿では、レジストメーカーおよびフッ素材料メーカー各社の特許情報からフッ素系レジスト材料の動向を探ってみた。

2、フッ素系レジスト材料の動向
レジスト材料としては、一般的に、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤成分とを含有する組成物が用いられている。
レジスト材料に求められるものは、少ない露光量で十分な解像性を発揮できる感度の高いことであり、ArFリソグラフィーの場合、その各成分として波長193nmにおいて高透明なものを選択するのが最も一般的である。
ベース樹脂については、ポリアクリル酸及びその誘導体、ノルボルネン-無水マレイン酸交互共重合体、ポリノルボルネン及び開環メタセシス重合体、開環メタセシス重合体水素添加物等が提案されている。特許的にはフッ素系ポリマーとして、パーフルオロアセトンから誘導される下記のメタクリレート共重合体3)、4)、ヘプタフルオロブタノールから誘導されるメタクリレート共重合体5)、トリフルオロ酢酸から誘導されるメタクリレート共重合体6)などが提案されている。いずれも酸不安定性基として働いている。
FT1
さらに、モノマーとして下記の構造も提案されている。7)
CH=CFCOOCH2CF2C(OH)(CF3)2
光酸発生剤も種々の検討がなされてきた。ArF化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤としては、KrFレジスト材料として開発された酸強度の高いパーフルオロアルカンスルホン酸を発生するものが一般的に使われているが、その構造は下記に示すように多彩である。8)、9)、10)
FT2
また、部分フッ素置換スルホン酸発生剤を用いても酸拡散によりコントラスト劣化を起こす問題点が発生し、下図に示す、ベース樹脂に酸発生基を含有するモノマーを共重合してポリマー化する方法も提案されている。11)、12)
FT3
さらに、有機溶剤を含有する現像液を用いてネガ型のレジストパターンを形成できる新規なレジストパターン形成方法が提案されている。この場合、下記に示すフッ素含有モノマーを共重合したベース樹脂、あるいはホモポリマーが提案されている。これは樹脂のネガ型現像液への溶解性を高めるためである。13)、14)
FT4
3、おわりに
レジスト材料において、フッ素は酸発生剤を中心に貢献している。フッ素導入により、酸性度が上がること、現像液への溶解性が向上すること、さらには遠紫外における透明性が高くなることなどがその理由である。今後は、マスク忠実性、LWR(Line Width Roughness)、パターン矩形性などの維持を加味した材料の開発が求められており、フッ素系レジスト材料が貢献していくことを期待している。

文献・特許
1) Electronic Journal 2013年7月号p40
2) 化学工業日報記事 2013年4月8日
3) セントラル硝子 特開2013-53196
4) 信越化学 特開2013-151592
5) JSR 特開2013-213999
6) 住友化学 特開2013-235254、特開2013-345255
7) ダイキン工業 特開2013-237858
8) 信越化学工業 特開2013-257541、特開2013-92657
9) JSR 特開2013-228663
10) 住友化学 特開2013-8023
11) 信越化学工業 特開2013-173854
12) セントラル硝子 特開2013-227466
13) 住友化学 特開2013-254187
14) 東京応化工業 特開2013-238787