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フッ素系センサー

月曜日, 9月 11th, 2017

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/webmaga/201709.html

1、はじめに
このフッ素系センサーに関しては、2011年10月号で紹介している。センサーとしてはガスセンサー、固体センサー、温度センサーがあり、本稿では2016年以降の報文をこの用途別に紹介する。

2、ガスセンサー
T. V. Basovaらは、NH3のセンサーとして下図に示す含フッ素フタロシアニンを開発し、金属Mによる違いを下記のように順列付けした。1) フッ素の効果は、大きな電気陰性度にあり、フッ素導入により酸化電位が増大し、還元性NH3に対する感度が上昇した。

ZnPcF16>CoPcF16≧CuPcF16>NiPcF16

T. V. BasovaらはCoPcF4の薄膜の構造とセンサーとしての能力を調べた。2)構造は下記の通り。センサーとして、下図に示すように、フッ素系は非フッ素系に比してNH3に対する感度は高かった(縦軸はNH3の濃度、aはCoPc、bはそれをアニールしたもの、cはCoPcF4、dはそれをアニールしたもの)。これはCoPcF4の方がCoPcよりNH3との結合が強いからだとしている。

Thidarat Supasaiらは、Ti/PTFEナノコンポジット薄膜をガラス上に、dcおよびrfマグネトロンスパッタリングで作製。3) Tiの含有量を27%以下にすると、平均サイズ7±2nmのTiクラスターが薄膜中に見られた。Ti含有量を増大するとTi同士の接触が起こり、薄膜は絶縁状態から金属状態に急激に変化する。Ti含有量を27%にするとアセトンやエタノールなど異なる揮発性有機化合物VOCの電気的検出ができる。感度はVOCの濃度による。このTi/PTFEナノコンポジット薄膜はC-C、C-CF、C-F、CF2、TiFの結合を区別できる。

Yuanji Suらは、単一電極のセグメント化された摩擦帯電ナノ発電機(S-TENG)を開発した。4)二つの銅電極に挟まれたFEPフィルムの風による振動を利用することによってS-TENGは36Vの開回路電圧と11.8μAの短絡電流を送る。(下図)

このことは、同時に20のLEDをライトアップし、キャパシターを充電することができることを意味する。さらに、S-TENGは出力電流と流量の間の直線性を維持し、それは電源内蔵型風力ガスセンサーとして実行可能である。ここでは、S-TENGの潜在的応用として、風力エネルギー収穫機や電源内蔵型ガスセンサー、高高度航空航法などが述べられている。

Yao Liらは、MMA/CF3CH2OCOC(CH3)=CH2(TFEMA)共重合体と白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)の酸素感知フィルムを作製し、水中の溶存酸素のセンサーとして評価した。5)

Geyu Luらは、Nafionelectrode とPt/C電極を用いた電流滴定COセンサーを作製した。6)炭素としては、炭素繊維(CFs)、多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)、カーボンブラック(CBs)が電極の担体として使用された。電極上の白金装填の有効性は、CFs>MWCNTs>CBsの順であり、COの感度の順序も同じであった。最高の感度は0.077μA/ppm、室温で1から200ppmのCO濃度の範囲で最短の応答時間であった。さらに50ppmCO濃度において再現性のある安定した応答が得られた。そして、COの検出限界濃度は0.1ppmであり、非常に低い濃度でも検出できることを示唆しているとしている。

Hao Wanらは、高感度、高信頼性、長寿命のガス検出を実行するガスセンサーを検討した。7)本論文は、室温イオン液体電気化学的ガスセンサーをベースにしたガス検出の迅速な電流測定法を提案する。小型化されたセンサーを作製すべく、下図に示す金交差電極を有する三つの電極システムがガス拡散を非常に高める多孔質PTFE上に光リソグラフィーにより形成された。さらに、酸素の可逆反応に基づいて、新しいトランジェント重複ポテンシャル電流測定が探索され、測定時間の短縮、可逆反応による副生成物の減少を達成した。

多孔質PTFEは、熱的化学的安定性に優れ、ガスの透過性も高い。

3、固体センサー
Katarzyna Tyszczuk-Rotko らは、パラセタモールとカフェインを同時にそして独立に検出するボルタメトリーセンサーとして、Nafionとビスマス粒子をコートしたホウ素をドープした電極を開発した。まずNafionにカフェインが吸着し、ビスマスが両方のピークを増大する。8)

Mika Harbeckらは、各種ポリアルコキシフタロシアニンを合成し、ペンタクロロフェノールのセンサーとして評価した。アルコキシ基としてC2H5(C2H4O)2、CF3OCF2CF2OCF2CH2O基が、金属としてCu、Ni、Tiが検討され、Cuが最も感度が高く、特にフッ素導入の効果はなかった。9)

4、温度センサー
L. Augouyらは、Er3+とYb3+をドープした、蛍光性イットリウムベースのフッ化物を合成した。10)そのナノ結晶は数十nmから数百nmに調整され、温度依存性の強い蛍光性を示す。これは25~100℃の範囲のナノスケール温度計としての優れた候補である。励起波長の強度と温度との関係は次式で表される。ここでA、Bは定数、IλおよびIλ’は励起波長λおよびλ’における強度、TはKelvin温度である。

Iλ/Iλ’=Aexp(‐B/T)

下表に各種ナノ結晶の励起波長とA、Bの値を示す。Bはそれぞれの励起状態の間のエネルギー差ΔEとボルツマン定数kとの比ΔE/kに等しい。

5、おわりに
フッ素系センサーを紹介した。圧倒的にガスセンサーが多い。フッ素は電気陰性度度が大きいため、吸着物質の酸化電位が大きくなり、NH3やCOなどの還元性ガスに有効であることと、フッ素の酸素との親和性が高いことによる酸素のセンサーとして利用されている。また、パラセタモールとカフェインを同時にそして独立に検出するボルタメトリーセンサーとして、Nafionとビスマス粒子をコートしたホウ素をドープした電極の開発も興味深い。さらに、温度依存性の強い蛍光性を示す蛍光性イットリウムベースのフッ化物がナノスケール温度計として優れた候補であることも興味深かった。

文献

1) T. V. Basova et al Sensor and Actuators:B 227(2016)634-642
2) T. V. Basova et al Applied Surface Science 372(2016) 79-86
3) Thidarat Supasai et al Applied Surface Science 368(2016)114-121
4) Yuanji Su et al Chemical Physics Letters 653(2016) 96-100
5) Yao Li et al Spectrochimica Acta Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy 170(2017) 242-246
6) Geyu Lu et al Sensors and Actuators B: Chemical 239(2017) 696-703
7) Hao Wan et al Sensors and Actuators B: Chemical 242(2017) 658-666
8) Katarzyna Tyszczuk-Rotko et al Sensor and Actuators B: Chemical 235(2016) 263-272
9) Mika Harbeck et al Sensor and Actuators B:Chemical 227(2016)277-282
10) L. Augouy et al Sensors and Actuators A: Physical 250(2016) 71-77