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「フルオロアルコール」

木曜日, 6月 19th, 2014

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/webmaga/201406.html

1、はじめに

フルオロアルコールは、含フッ素アルコールやフッ素系アルコールなどとも言われ、フッ素原子を含むアルコール類のことである。フッ素を含むことにより、極性が高い、酸性度が高い、酸化されにくいなどの特徴のあるアルコールとなり、溶媒や中間体として使用されている。ここでは、フルオロアルコールの特徴と用途について概観し、最新の文献情報を紹介する。

2、フルオロアルコールの特徴と用途

フルオロアルコールの中では、CF3CH2OH(TFE)、(CF3)2CHOH(HFIP)、HCF2CF2CH2OH(TFP)、C6F13C2H4OHなどが実用化されている。
TFEは吸入麻酔剤イソフルランやデスフルランの原料として重要である。また、高い熱安定性と動力学的な特性があり、ランキンサイクル作動媒体である廃熱回収発電システムの媒体として使用されている。さらに、適当な蒸発潜熱とアミド化合物と混合すると大きな溶解熱を発生する。これを利用したケミカルポンプの開発が進んでいる。その他、ポリアミド、PMMA、アセチルセルロースなどのポリマー溶媒として使用され、メタクリレートに転換してモノマーとして光ファイバーの鞘材やコンタクトレンズなどに展開されている。1)

HFIPは、PET、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどの溶媒として、特にGPC分析液の溶離液として使用されている。また、HFIPを導入したレジストとしても重要である。本レジストを基板に塗布した際、親水性に加え、高い透明性と基板との密着性を発現し、波長193nmのArF等を光源とする紫外線露光において、概ね、露光感度が高く、露光部がアルカリ現像液に対し可溶となり、フォトリソグラフィ法によりパターニングが可能である。

TFPは、光学記録媒体の記録層形成時に、色素を溶解させ、ポリカーボネート基板に塗布する溶剤として使用されている。基板への影響がない特性が生かされている。

C6F13C2H4OHは、リン酸エステル化して、紙用撥油剤、離型剤として使用されている。また、イソシアネートと反応させたウレタン化合物は防汚加工剤として使われている。

網井は、「フッ素系アルコールを使う不斉反応」と題して、下記に示す含フッ素イミノエステルの不斉水素化反応について述べている。2)その中で、フルオロアルコールが極性の高さ(イオン化力が大きい)、酸性度の高さ(フェノール程度の酸性度)、優れた水素結合ドナー、酸化されにくい性質などの特徴を有しているので、反応溶媒として有用だとしている。フルオロアルコールとしては、TFEやHFIPが収率99%以上、エナンチオマー(R)選択性も前者が88%、後者が69%と高かった。

FT0

3、フルオロアルコールに関する最新の文献から

Sergey Lermontovらは、HFIPなどのフルオロアルコールが超臨界乾燥の溶媒として期待されるとしている。3)多くのSiO2、Al2O3、ZrO2などを含むエアロゲルがHFIPを用いて作製され、エタノールを用いた場合に比して比表面積が2倍であった。また、超臨界乾燥温度を実質的に下げることができ、エアロゲルの表面を疎水性にできる。

Sadegh Rostamnia らは、下図に示す、ナノ多孔性シリカとTFEの組合せで、広いスペクトルの生理活性を示すIndazorophthalazinetrionesを合成し、高収率が達成できるのみならず、ナノ多孔性シリカもTFEも再処理しないで再使用できることを報告している。4)

FT1

Samad Khaksar らは、TFE中でdihydro-1H-indeno[1,2-b]pyridinesを合成している。5)反応速度が速く、高収率でシンプルなプロセスであり、TFE溶媒の特徴であることを謳っている。特に反応系からの分離が容易で再使用可能な点が優れているとしている。

FT2

Julien Legrosらは、抗リーシュマニア薬の仲間である、2-プロピルキノリンの合成を検討し、下記に示すワンポット合成に成功した。6)その際、TFEが溶媒として優れていることを述べている。

FT3

Yuliang Cao らは、Scheme1に示すように、TFMPをTFEとメチルホスホニルジクロリドから合成し、リチウムイオン電池の難燃添加剤として検討している。その結果、電池特性にほとんど影響なく高い難燃性を実現できたと報告している。7)

FT4

Chunming Xuらは、フルオロアルコールと有機超塩基をベースとする極性がスイッチ可能なイオン液体を合成し、その性質を調べている。8)合成は下図に示す。TFEあるいはTFPとの付加体はCO2をバブリングするだけで簡単に極性の高いカーボネートアニオンになり、さらに65℃2時間の熱をかければ極性の低いアルコキシアニオンになる。しかも湿気による影響はほとんどなかった。こうしたスイッチングはフルオロアルコールの特徴といえる。

FT5

K. Wnorowski らは、CO2との混合状態でのフルオロアルコールへの低エネルギー電子付着の動力学について報告している。9)下表に熱的電子付着の298°Kの速度定数、それぞれの温度範囲での活性化エネルギーを示す。フルオロアルコールはエタノールに比べると電子付着しやすいことが分かる。また、エタノールに比して複雑な分解が起こることも示された。例えば、TFEはCF3CH2O-、C2F2HO-、C2FO-、CF3-、F-に分解する。

アルコール 1k298(㎝3s-1) 1Ea(eV) 1Trange(K)
EtOH 13.2±0.2×10-13 10.37±0.008 1298-348
TFE 15.1±0.1×10-11 10.25±0.015 1298-368
CF3CF2CH2OH 11.1±0.2×10-10 10.28±0.017 1298-413
PFIP 13.0±0.3×10-10 10.20±0.007 1298-368
CH3CH(OH)CF3 2.6±0.2×10-11 0.23±0.023 298-368

畑中らは、H(CF2)6CH2OHを用いて水との2相系での動物の細胞培養を行い、H(CF2)6CH2OHが酸素の貯蔵場所となり、細胞の成長を助けていることを報告している。10)

David W. Brittらは、TFEやHFIPは強力なたん白質のαへリックスを誘発剤として知られているが、それに似た構造の(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシランがさらに強力な誘発剤であることを見出している。11)

4、おわりに

本稿は、ダイキン工業株式会社化学事業部ファインケミカル部からの要請で取り上げた。調べてみると改めてフルオロアルコールはユニークな特徴を有し、適切に使用され、さらに将来的にも大きな可能性を秘めていることを認識した。最後に、多彩なフルオロアルコールを展開しているダイキン工業株式会社化学事業部ファインケミカル部へのアクセス方法を下記に示す。目的に合ったフルオロアルコールを入手され、展開されることを期待している。

【フルオロアルコール問合せ先】
ダイキン工業株式会社 化学事業部 ファインケミカル部
大阪市北区中崎西二丁目4番12号
TEL:06-6373-4221 担当:松宮
Web:http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/index.html

文献・特許

1) ファインケミカル30(10) 21 2001
2) 網井秀樹 ファインケミカル40(1) 16 2011
3) Sergey Lermontov et al The Journal of Supercritical Fluid 89(2014) 28-32
4) Sadegh Rostamnia et al Tetrahedron Letters 55(2014) 2508-2512
5) Samad Khaksar et al Journal of Molecular Liquids 196(2014) 159-162
6) Julien Legros et al Journal of Fluorine Chemistry 152(2013) 94-98
7) Yuliang Cao et al Electrochimica Acta 129(2014) 300-304
8) Chunming Xu et al Chemical Engineering Science 108(2014) 176-182
9) K. Wnorowski et al Chemical Physics Letters 591(2014) 282-286
10) Kenichi Hatanaka et al Journal of Fluorine Chemistry 163(2014) 46-49
11) David W. Britt et al Colloids and Surfaces B:Biointerface 119(2014) 6-13