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「ナトリウムイオン電池」

木曜日, 3月 6th, 2014

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201403/

1、はじめに
リチウム二次電池は、今や新エネルギーとして家電用では最も使われ、車載用としても今後の期待が大きい。しかし、原料問題、安全性の問題など課題は多い。そこで、その問題を解決し、コスト的にも優位なナトリウム電池の開発が進んでいる。本稿では最近の文献、特許からその動向およびその中でのフッ素がどのように使用されているのかを探ってみた。

2、ナトリウム電池の概要
ナトリウム電池の構造は下記の通りであり、基本的にはリチウムイオン電池のリチウムイオンをナトリウムに置き換えた構造をしている。1)但し、ナトリウムはリチウムに対し、イオン体積にして2倍高く、原子量にして3倍以上大きいので、リチウムイオン電池で用いられている負極材料黒鉛では、吸蔵放出させることが不可能である。従って、負極材料としてハードカーボンを用いるなど、ナトリウムイオン電池用に正極も含めて開発が必要であった。2)
FT1

3、ナトリウム電池におけるフッ素
ナトリウム電池において、フッ素が使われているあるいは提案されているのは電解液と電極である。それぞれについて述べていく。

3-1、電解液
ハードカーボンはナトリウムイオンを可逆的に脱挿入可能ではあるが、サイクル安定性が不十分であるという課題があった。しかし、駒場らは電解液として、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)を単独あるいは1:1混合溶媒で用いると良好なサイクル特性が得られることを見出した。3)ジメチルカーボネートを使用した場合、ナトリウムアルコキシドなどの電解液分解物が多量に発生してサイクル特性を低下させていることが分かった。リチウムイオン電池においては、負極上に不動態被膜(SEI)を形成させるべく添加剤を使用しているが、ナトリウムイオン電池においても同じ手段が有効であることが分かった。

萩原らは、423Kで作用するNaCrO2を正極とするナトリウム二次電池における新電解質として、イオン液体NaTFSA(10mol%)/CsTFSA(90mol%)を検討した。4)このイオン液体の423Kでの粘度、イオン伝導度、密度、電気化学窓はそれぞれ、42.5cp、12.1mS/cm、2.29g/cm-3、4.9Vであった。本条件での充放電特性を調べ、定電流速度が10サイクル後10mA/gの場合と50サイクル後100mA/gの場合における放電容量はそれぞれ83.0mAh/g、66.4mAh/gであった。初期の数サイクルを除くとクーロン効率は99.5%以上であった。このことから、このナトリウム二次電池が423Kを中心とする373Kから473Kの温度範囲で新規二次電池として有望であるとしている。

3-2 電極
岡田らは、Na3M2(PO4)2F3[M=Ti, Fe, V]を2段階固体状態合成で合成し、ナトリウムイオン電池の負極活物質としての可能性を調べた。5)合成は、V2O5あるいはTi2O3と(NH4)2HPO4とを混合し、650~950℃15時間熱するか、FePO4・2H2Oを100℃、真空中で3時間熱してMPO4の形にし、次いで、NaFと混合して空気流の中で600℃2時間反応させた。Na3V2(PO4)2F3の場合、構造は下図の形であることがX線解析から推定された。そして、Na3V2(PO4)2F3が容量として120mAであり、サイクル特性も20サイクル後の保持率が98%と高く、安定していることがわかった。また、選定電圧で充放電した時のNa3V2(PO4)2F3電極のex-situ XRD測定データから、物質構造はc軸に沿って4.3Vまで膨張し、サイクル後は元の大きさにもどることが分かった。このことは、Na原子が正方晶構造の中で(002)a-b面に沿って出入りしていることによるとしている。
FT2
Teofilo Rojoらは、混合原子価ナトリウム-バナジウムフッ化リン酸Na3V2Ox(PO4)2F3-x(0<x<1)とカーボンから成るコンポジットをナトリウムイオン電池の正極に使用してその可能性を調べている。xが0の時はV3+であり(Na3V2(PO4)2F3)、xが1の時はV4+となり(Na3(VO)2(PO4)2)、この原子価の変化はカーボンの影響を受けている。6)コンポジットの固有面積は67m2/gと高く、固有の充放電容量のサイクル特性は下図の通りで、1C、200サイクルで99%以上のクーロン効率が得られ、ナトリウムイオン電池の正極として優れた特性を有しているとしている。
FT3

4、おわりに
最近の特許を見ると、トヨタ自動車が電解質としてNaPF6を用い、負極に炭素材料、対極に金属Naを用いたナトリウム二次電池を提案している。7)また、本田技研工業も電解質としてNaPF6、正極にグラファイト、対極に金属Naを用いたナトリウム二次電池を提案していて、8)実用化に向け開発が進んでいる様子がうかがわれる。今後の動きに注目したい。

文献
1) 駒場慎一

http://j-net21.smrj.go.jp/develop/energy/company/2012121301.html

2) 住友化学筑波開発研究所 住友化学2013 p20-30
3) 駒場慎一他、ファインケミカル2012年8月号 p22-28
4) Rika Hagiwara et al  Journal of Power Sources 205(2012) 506-509
5) Shigeto Okada et al  Journal of Power Sources 227(2013) 80-85
6) Teofilo Rojo et al Journal of Power Sources 241(2013) 56-60
7) トヨタ自動車 特開2013-137907
8) 本田技研工業 特開2013-54987