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「フッ素系重合触媒」

火曜日, 10月 15th, 2013

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201310/#topic01

1、はじめに
フッ素系重合触媒としては、カチオン重合触媒としてBF3が使用されていること、あるいはメタロセン触媒に(C6F5)4B+(C6H5)3C-が助触媒として使用されていることは周知のことである。ここでは、最近の文献、特許からフッ素系重合用触媒の最近の状況を述べる。

2、エチレンの重合
Praserthdamらは、下図に示す含フッ素フェノキシイミン(FI)型Ti錯体を合成し、メチルアルミノキサン(MAO)と組み合わせてエチレンの重合を行い、超高分子量ポリエチレンを得た。1)Rの部分がCl、Br、Iである3種類を合成し、いずれもMwで300万以上の超高分子量のポリエチレンを得た。この中で、Brを含むものが最も高い活性を示した。本重合はリビング重合であり、分子量分布が狭いことも特徴的である。
FT1
FT2
Hong Fanらは、含フッ素FI-Ti触媒(bis[N-(3-methylsalicylidene)-2,3,4,5,6- pentafluoroanilinato]TiCl2/driedMAO)を用いてエチレンのリビング重合を行い、途中でZnCl2を加えることで、バイモーダル分子量ポリエチレンを得た。2)結果をTable1に示す。ZnCl2を加えないと分子量分布の狭い高分子量のポリエチレンが得られるが、ZnCl2量を加えると分子量が低下し、その量を増大するとさらに低下する。そこで、まずはZnCl2を加えない触媒系で重合を行わせ、その後ZnCl2を加えてさらに続けることで、バイモーダルな分子量分布を持ったポリマーが得られた。
FT3
下図において、Run3はTable1の条件、Run10は、Zn/Ti=180で15分間重合、Run11は最初の5分間はZn/Ti=0で、その後ZnCl2を添加し、Zn/Ti=180の状態で15分間重合した。
FT4
3、α-オレフィンの重合
E.P.Talsiらは、α-オレフィンの配位重合についての総説を報告しているが、その中で含フッ素配位子を有する錯体触媒についての記述を抜粋した。3)

まずは、メタロセン触媒についてであるが、下図に示すMeB(C6F5)3-、B(C6F5)4-を配位子とするメタロセン触媒(M=TiあるいはZr)において、Aの内圏型、B、Cの外圏型イオンペアがB/Mがほぼ1の時に存在する。また、1や7のフェノキシイミン錯体はMAOやAlMe3/[CPh3][B(C6F5)4]で活性化されるが、C型のイオンペアは形成せず、B型のイオンペアを形成する。内圏型イオンペアAは外圏型Bに比して触媒活性が低い。これはCH3B(C6F5)3-の方がB(C6F5)4-に比べて配位力が強く、中心金属から離れにくいからだとしている。
FT5
また、下図の錯体は1-ヘキセンの重合において触媒のエージングとともに直線的に分子量が増大する。この場合、13aが13bに変化していることを突き止めている。
FT6
さらに、1や7の錯体触媒において、F原子がオルト位にあるとリビング重合が可能になるとの見解を示している。例えば下図において、オルト位のFがTiと直接相互作用していることをNMRで検証し、この相互作用が鎖成長部位に強く影響し、連鎖移動反応を阻止しているとしている。
FT7
4、開環重合
R. J. Bakerらは、下式の方法で合成したRf(C6F13C2H4)基含有Zn錯体によるε-カプロラクタムの開環重合について報告している(下表)。4)
FT0

FT8

ここで、BnOHはベンジルアルコール、THFは溶媒テトラヒドロフランである。本フルオラス触媒は1,3ビストリフルオロメチルベンゼンのようなフッ素系溶媒に溶けるのでリサイクルが容易であるが、ベンジルアルコールを開始剤としたときはリサイクルが困難になる。

5、おわりに

このほかに、CO2とエポキシ化合物との共重合において、含フッ素Zn二核錯体を触媒とすると連鎖移動の少ないポリマーが得られたとの報告などがある。5)

フッ素系重合触媒がオレフィンのリビング重合に重要な役割を演じていることは興味深い。また、フルオラス触媒のリサイクル性にも注目したい。

文献

1) Piyasan Praserthdam et al Polymer 54(2013) 3217-3222
2) Hong Fan et al European Polymer Journal 49(2013) 1823-1831
3) Evgenii P. Talsi et al Coordination Chemistry Reviews 256(2012) 2994-3007
4) Robert J. Baker et al Journal of Fluorine Chemistry 139(2012) 58-62
5) Bernhard Rieger et al Coordination Chemistry Reviews 255(2011) 1460-1479