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「フッ素系ナノコンポジット」

木曜日, 9月 5th, 2013

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201309/#topic01

1、はじめに
フッ素ポリマー/無機ナノコンポジットの開発が盛んだ。フッ素ポリマーの耐熱性、表面特性などの特徴を活かしながら機械的強度の向上、低コスト化を図ることは勿論のこと、超撥水・撥油材料、固体触媒、ガス透過性膜、高誘電率体、低誘電率・高強度材料などをターゲットに多彩なナノコンポジットが開発されている。また、フッ素ポリマーと他のエンプラとのナノコンポジット化によりそれぞれの特徴を発揮するポリマーアロイの報告もなされている。ここでは、これらの文献情報をまとめてみた。

2、フッ素系ポリマー/無機化合物ナノコンポジット
中国の研究者による無機化合物とフッ素ポリマーのナノコンポジットの研究が盛んである。
Chengxue Zhaoらは、下図左のω-スルフォニックパーフルオロアルキル化ポリ(スチレン‐無水マレイン酸)/シリカナノコンポジットを合成した。1)新規な触媒として、プソイドヨノンの環化反応、インドールの縮合反応、安息香酸のエステル化反応においてNafion/SiO2と同等以上の高い活性を確認している。
また、Ling Heらはメトキシシランで処理したSiO2をコアとし、CF3CH2OCOC(CH3)=CH2/MMA/BAの共重合体をグラフト重合によりシェルとするコア・シェルタイプのナノコンポジットを合成し(下図右)、その分散性を調べた。2)その結果、SiO2をCH=C(CH3)COOC3H6Si(OCH3)3で処理した方がCH2=CHSi(OCH3)3で処理したよりもグラフト率は高く、有機溶媒への分散性が高いことが分かった。本ナノコンポジットはコーティング用途として有望で撥水性、耐熱性、耐薬品性が期待できるとしている。
FT1
次いで、Xiaoyun Liuらは、下図に示す6FPBOT/POSSとのナノコンポジットを作製し、優れた耐熱性、機械的特性と2.11という低い誘電率を確認している。(6FPBOTは2.56)3)
FT2
さらに、Hequing Huらは、(HOC2H4)2(C12H24)CH3N+Clで修飾された有機モンモリロナイト(OMMT)と水系含フッ素ポリウレタン(FWPU)とのナノコンポジットエマルジョンを合成し、そのフィルムの特徴を調べた。4)合成はCF3CHFCF2CH2OCOC(CH3)=CH2とポリブチレンアジペートグリコールとイソホロンジイソシアネートから合成したポリウレタンをOMMTとHOC2H4OCOCH=CH2で修飾したマクロモノマーとのエマルションシード重合で行った。耐熱性はOMMTコンテントとともに上がった。機械的強度はOMMTが2%の時最大であり、撥水性はFWPUのコンテントが増えると増大した。
B. J. Bathらは、ポリジメチルシロキサン/シリカナノコンポジットにC6F13C2H4Si(OCH3)3(FAS-13)をコーテイングして、下表に示すように水の接触角158度、油の接触角79度を得ている。5)ここで、aはFAS-13を2回、bは4回、cは6回スプレーをしているが、大差はない。
FT3
G. Weberらは、TeflonAFとC6F13C2H4Si(OCH3)3で修飾されたシリカ(FNP)およびFC-70とのナノコンポジットを作製し、ペンタフルオロニトロベンゼンなどのフルオラス液体の透過性を調べている。6)液体透過性に影響するのはフィルムの自由体積であるとしている。TeflonAFについては、ガラス状(高Tg)か可塑化状(低Tg)かにより異なり、前者で特にFNPのwt%が高い系ではFNPの周りに蔓が巻きついたような形をしているが、後者の場合は、FNPをコアとし、TeflonAFをシェルとするコア・シェル構造を形成している。いずれもみかけの自由体積分率は約50%と高かった。また、わずか10wt%のTeflonAFのコンテントで満足なフィルムが形成され、フルオラス液体の選択的分離が可能になったとしている。
Stefan B. Ebbinghausらは、P(VDF-HFP)とBaTiO3とのナノコンポジットを作製し、フィルムコンデンサーの絶縁誘導体として評価した。7)BaTiO3ナノ粒子はゾルゲル法で作製し、n-オクチルホスホン酸と2,3,4,5,6-ペンタフルオロホスホン酸を用いて二次粒子化を防いでいる。その系をP(VDF-HFP)溶液に分散させてナノコンポジットを作製した。本ナノコンポジットはP(VDF-HFP)の5倍の絶対誘電率を有しており、フィルムコンデンサーとして有望としている。
Ilker S. Bayerらは、MWCNTとフルオロアクリレート共重合体(デュポン社のCapstone ST-100 石材用撥水撥油剤)とのナノコンポジットを作製し、撥水性を評価した。8)その結果、下図に示すように風乾(a)でMWCNT10%以上で150度を超える超撥水性を示し、さらに165℃でキュアする(b)と同じくMWCNT10% 以上で165度を超える超撥水性を示した。
FT4

3、フッ素ポリマー/PEEKナノコンポジット
ダイキン工業とダイセルは、PEEK中にフッ素樹脂がナノオーダーで分散する新規アロイの開発に成功した。9)
下表にPEEKとFEPのナノコンポジットZV7801をPEEKと比較した特性を示す。まず、ZV7801が室温でPEEKの10倍、‐30℃で数倍の衝撃強度を示すことが特筆される。これは、ZV7801の曲げ弾性率が15%低くなっているため、PEEKに柔軟性が付与されたためと考えられる。これにより「細く強く、フレキシブルに使用する」用途に展開できるとしている。また、ウェルド強度の保持率が高い、引張弾性率がPEEKのTg150℃付近まで変化しない、疲労特性のラインの傾きが変わらないといったPEEKの基本的な特性が変わっていない。さらに、摩擦係数が0.23と低く、優れた摺動特性を有していること、難燃性が付与されていることなどのフッ素樹脂の特性を有することが分かった。そして、射出、押出、切削加工のいずれの工法でも成形加工できることが検証されている。
FT5
4、おわりに
フッ素ポリマーと無機化合物のナノコンポジットは中国において盛んであるが、今のところ画期的な結果には至っていない。しかし、超撥水性・高撥油性材料、液体分離膜、絶縁誘導体など多彩なアプリケーションが検討されており、今後に期待したい。また、エンプラとフッ素樹脂とのナノコンポジットにおいて大いなる可能性が得られており、フッ素ポリマーと他材料とのナノコンポジットは、今後目が離せないテーマであると考えている。

特許
1) Chengxue Zhao et al Journal of Molecular Catalysis:A365(2012) 73-79
2) Ling He et al Journal of Colloid and Intersurface396(2013)129-137
3) Xiaoyun Liu et al Synthetic Metals 175(2013) 112-119
4) Hequing Fu et al Composites Science and Technology 85(2013) 65-72
5) B. J. Bath et al Applied Surface Science 261(2012) 807-814
6) G. Weber et al Journal of Membrane Science 443(2013) 115-123
7) Stefan B. Ebbinfhaus et al Material Science and Engineering B 178(2013) 881-888
8) Ilker S. Bayer et al Chemical Engineering Journal 221(2013) 522-530
9) 六田充輝 プラスチックエージ2013年4月号 100-104