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「ドラッグデリバリーシステム」

木曜日, 7月 11th, 2013

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201307/#topic01

1、はじめに
ドラッグデリバリーシステム(DDS)とは、体内の薬物分布を量的・空間的・時間的にコントロールする薬物伝達システムのことである。薬物の過剰投与および副作用を抑制して、より安全に、効果的に薬物投与を行うことができる。薬物をカプセル化する方法とエアゾール化する方法において、フッ素がどうかかわっているかを最新の文献からまとめてみた。

2、カプセル化
Janjicらは、薬物伝達と画像化のための遠赤外線ラベル化パーフルオロポリエーテルナノエマルジョンについて報告している。1)パーフルオロポリエーテル(PFPE)としては下記のPFPE-ティラミドを用いた。
FT1
Table1に示す組成の遠赤外線ラベル化パーフルオロポリエーテルナノエマルジョンの概念図をFig.1に示す。ここで、Miglyolはカプリル酸トリグリセリド(炭化水素オイル)、Cremophor ELはポリエトキシ化ひまし油(炭化水素オイル)、P105はPluronic P-105(界面活性剤)、Celecoxibは非ステロイド性抗炎症薬(薬剤)、NIR815は遠赤外線ラベル色素である。このナノエマルジョンの性状をTable2に示す。Aは色素および薬物がなく、Bは薬物がないが、いずれも180nmの径、0.2以下の多分散インデックス(PDI)を示す。PFPE-ティラミドは19FNMRラベルである。19FNMRおよび遠赤外線スペクトルを測定して、薬物伝達性と画像化の機能を確認している。
FT2
FT3
Aydoganらは、フルオロカーボンとハイドロカーボンをコートした金のナノ粒子(FHNPs)を作製し、薬伝達システムに適用した。2)作製法は下図に示すように金ナノ粒子表面に吸着している1-デカンチオール(DT)をC8F17CH2CH2SHで置換するもので、末端SHにして効率が上がった。
FT4
FHNPsはハイドロカーボンベースの脂質薬伝達システムに集積しやすく、結像を促すので優れた薬伝達物質の可能性が高いとしている。
Perretらは、いくつかの癌の治療の標的となるカゼインキナーゼ2(CK2)ATPの競合的阻害剤である下図左のインデノ[1,2b]インドール(CM1)を下図右のシクロデキストリン(CD)でカプセル化し、薬伝達剤として評価している。3)CDは下図に示すようにC6H13、C8H17およびC6F13を導入(α体)。β体についても同様の基を導入。
FT5
3、MAFの重合
FT6
CX1とCDをエタノールに溶解し、5日間撹拌してカプセル化した。その後、遠心分離で固体を分離し、乾燥CX1の取り込み率を測定した。その結果、下表に示すようにC6F13基を導入した系が高い取り込み率を示した。また、カプセル化したナノスフェアのサイズも小さかった。
カプセル化のイメージとしては下図のようであり、CDの疎水性の部分にCX1が取り込まれていて、C6F13基の方が、安定性が高い。
薬の放出性は、C6F13基の方が徐放性であり、薬伝達薬剤として優れているとしている。
FT7
3、エアゾール

Tsagogiorgasらは、エアゾール化したC6F13C8H17(F6H8)やC4F9C5H11(F4H5) などのフルオロカーボン(FC)の薬伝達剤としての機能を検証した。4)非ステロイド系消炎鎮痛剤イブプロフェンとFCの配合系は噴霧でき、その薬物動態を評価できる。本論文では、イブプロフェンの水溶液、F6H8およびF4H5との配合系、F6H8/エタノールおよびF4H5/エタノール配合系の5つの配合系について、比重、表面張力、粘度、屈折率を測定。次いで、ジェットカテーテルを使って噴霧出来ることが分かり、ウサギを使って動物実験を行った。その結果、吸収性はF4H5/エタノールが最も高く、F6H8/エタノールが最も低かった。また、F6H8/エタノールの場合、肺組織中にイブプロフェンが沈着していた。

4、おわりに
薬物伝達剤としてのフッ素の役割は、疎水性が大きく薬剤を取り込みやすく、徐放性を実現できることである。また、NMRスペクトルの感度が高く、追跡しやすいことも大きな特徴となっている。今後、これらの特徴を生かしたこの分野への応用がますます盛んになっていくと期待している。

文献
1) J. M. Janjic et al Journal of Fluorine Chemistry 137(2012) 27-33
2) Nihal Aydogan et al Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects 419(2013) 257-262
3) Florent Perret et al International Journal of Pharmaceutics 441(2013) 491-498
4) C, Tsagogiorgas et al International Journal of Pharmaceutics 422(2012) 194-201