Archive for 1月, 2013

「フッ素系新規分離ポリマー」

火曜日, 1月 22nd, 2013

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201301/#topic01

1、はじめに
2011年6月号で「膜分離技術」と題してPTFEやPVDFを用いた膜分離技術を解説したが、その後も活発な開発が継続している。本稿では、「エレクトロスピニングによるナノ繊維製膜」に関する文献および「放射線グラフトポリマー製膜」についての総説を紹介する。

2、エレクトロスピニングによるナノ繊維製膜1),2),3)

ポリマーナノ繊維は、ここ10年で注目度が増大している。その加工方法としては、延伸法、テンプレート作製法、相分離法、界面重合法、自己集合法、エレクトロスピニング法などがある。その中でエレクトロスピニング法は多孔性疎水膜を作成する方法として有効な方法であり、膜蒸留(MD)分離に適している。エレクトロスピニング法の概念図を下図に示す。
FT1
Fengらは、PVDFの18wt%DMF溶液が2mL/hの速度でエレクトロスピニングし、3時間で0.15㎜の厚みのナノ繊維膜(ENMs)を作製した。この場合。上図のように紡糸口金の針先と収集金属板の間(18㎝)に高電圧(18kV)をかけている。その後、ドラフトチャンバー中で室温24時間乾燥した。本法によりPVDFにテトラメチルオルトシリケート(TMOS)を混合してナノ繊維の径を細くし、ENMsの撥水性を高めた報告がなされている。下図は、TMOSの含有量と膜表面の水の接触角との関係を示したもので、10%、20%、40%とあげていくと繊維径はそれぞれ343±59nm、265±42nm、240±35nmとPVDFのみの場合の403±63nmより細くなって、ENMs表面の水の接触角が高くなっていることがわかる。その他、PVDF/粘土、PVDF/PVCやPVDF以外のENMsが紹介されている。ENMsは、SEM観察により、ナノ繊維の空孔率が改善され、MD分離に有利になっていることが分かった。
FT2
 次いで、ENMsのMDによる水処理への適用については、脱塩、真空MDによる水とエタノールの分離、ガスストリッピングMDによる揮発性有機化合物(VOC)の除去などが取り上げられている。例えば、PVDFのENMsは6%のNaClを含む塩水の脱塩を、20日間以上膜を濡らすことなく継続してできたこと。また、PVDFのENMsがVOCの代表であるクロロホルムのガスストリッピングで中空繊維膜より高い物質移動係数で除去できたことなどが例示されている。さらに、ENMsが廃水処理、食品加工、医薬品精製などで期待されているとしている。

Wangらは、PVDFのENMsを直接接触蒸留(DCMD)に適用した。その原理を下図に示す。Hot feed 側では、303~353K のホットな海水(3.5wt%NaCl)をぜん動ポンプで0.4~2L/minで循環させ、一方、Cold permeate側では、脱イオン水を室温で同じくぜん動ポンプで0.1~0.5L/minで循環させる。淡水化された水はCでオーバーフローして集められる。15時間運転して、透過フラックスは21㎏/h・m2であった。この値は市販のPVDF膜やナノ繊維PVDF/粘土コンポジット膜より高い値であった。
FT4
Hashaikehらは、PVDF-HFP共重合体(PH)のENMsをDCMDに適用した。エレクトロスピン法で繊維径を変え、ポリマー濃度を10、12、15%と変えてマットを作り、ホットプレスで膜とした。10%濃度で作製し、ホットプレスで2層膜とした膜が最適値を示し、平均繊維径0.26µm、空孔率58±5%、水の接触角125±2.41、入口圧力(LEP)19.1psiが得られた。この膜を用いてDCMDによる脱塩を行ったところ、水分流動率20~22L/h・m2が得られ、脱塩率は98%であった。

3、放射線グラフトポリマー製膜4)

既存のポリマーを放射線グラフト重合して機能性を付与し、分離・精製膜として適用することに関する総説を紹介する。

放射線グラフト重合法(RIGC)が下図にまとめられている。放射線をベースポリマーに予め照射してからモノマーを導入するか、モノマーを導入しながら照射する二つの方法が採られている。前者においては、真空中あるいは不活性ガス中で照射するとラジカルが生成するが、空気中で照射すると、ベースポリマー上にはパーオキサイドができ、その分解によってラジカルが発生する。いずれにしても副生するホモポリマーは前者の方が少ない。グラフト重合法には溶液重合、乳化重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、ニトロオキシド媒介重合などがある。
FT3
グラフトポリマーとして、イオン交換ポリマー、キレートポリマー、ヒドロゲル、アフィニティグラフトポリマーが述べられている。その中で、フッ素系ポリマーについては、FEPあるいはPVDFフィルムにアクリル酸あるいはスルフォン化スチレンをRIGCし、イオン交換ポリマーとする例、PVDFやPTFEにグリシジルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートをRIGCさせ、エポキシ基をSH基に転換し、種々の金属イオンによりキレート化した例、PTFEあるいはFEPとN-ビニルピロリドン(N-VP)とのRIGCをヒドロゲル膜として用いた例をなどが挙げられている。

次いで、このグラフトポリマーを分離膜・精製膜としての応用について述べられている。その中でフッ素系グラフトポリマーとしては、PTFEやFEPとアクリル酸、アクリルアミド、酢酸ビニルなどとのRIGCイオン交換ポリマーを脱塩膜として用い、90%以上の脱塩率を達成した例、同種ポリマーを低濃度金属イオン含有廃水からCu2+、Ni2+、Mo2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Cr2+、Fe3+イオンを効果的に除去した例、PTFEやFEPとN-VPとのRIGCのヒドロゲル膜が生体医療においてタンパク質の分離膜として利用された例などが紹介されている。

最後に、RIGCが多彩なポリマーを創出できる可能性を秘めていて、水処理、化学工業、環境工学、バイオ技術、生体医療などの分野での応用が期待されているとしている。

4、おわりに

フッ素系分離ポリマーについて、最新の文献の中でエレクトロスピニング法およびグラフトポリマーについて紹介した。ここに紹介した以外にも、PVDF中空繊維膜5)、6)、多孔性疎水性PVDF膜7)、ポリジメチルシロキサン/PVDFコンポジット膜8)等々文献は多々あり、この方面での開発が活発であることを再認識した。特に環境問題や水処理の重要性は今後益々増大することは容易に予測できることで、その中でフッ素系ポリマーの果たす役割は大きくなっていくと考えている。

文献

1) C. Feng et al Separation and Purification Technology 102(2013) 118-135
2) Rong Wang et al Journal of Membrane Science 425-426(2013) 30-39
3) RaedHashaikeh et al Journal of Membrane Science 428(2013) 104-115
4) Mohamed Mahmoud Nasef et al Progress in Polymer Science 37(2012) 1597-1656
5) A.F. Ismail et al Journal of Membrane Science 423-424(2012) 503-513
6) A.F. Ismail et al Journal of Membrane Science 427(2013) 270-275
7) A.L. Armad et al Separation and Purification Technology 103(2013) 230-240
8) Min Xiao et al Journal of Membrane Science 428(2013) 172-180