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「発光性含フッ素金属錯体」

金曜日, 12月 21st, 2012

最新フッ素関連トピックス」はダイキン工業株式会社ファインケミカル部のご好意により、ダイキン工業ホームページのWEBマガジンに掲載された内容を紹介しています。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。尚、WEBマガジンのURLは下記の通りです。

http://www.daikin.co.jp/chm/products/fine/backnum/201212/#topic01

1、はじめに
発光性金属錯体は、生体医療画像、光センサー、光スイッチ、蛍光プローブ、LEDランプデバイスなど幅広く応用されている。その中で、発光性含フッ素金属錯体の開発が活発化している。本稿では、最新の文献・特許からその開発状況を探ってみた。

2、ヘキサフルオロアセトナート(hfaa)を配位子とするサマリウム(Sm)錯体1)
下図に示すhfaaを配位子とするSm錯体を合成し、その構造と発光性を調べた。構造はX線解析などにより単斜晶でSmの周りの配位多面体は正4角反柱であることがわかった。
FT1
有効な分子内エネルギー遷移は配位子の三重項状態からSm(III)イオンの発光4G2/5状態へであった。錯体の相対量子収率は0.012であり4G2/5状態での寿命は0.039ms(χ2=1.071)であった。本錯体は高い蛍光性を示し、低融点で揮発性であり、蛍光薄膜の作製に適しており、比較的低温での発光デバイスの製作に有望であるとしている。

3、含フッ素キノリンを配位子とするイリジウム錯体2)
下図に示す、含フッ素フェニルキノリン(hfppq)とビピリジル(bipy)を配位子とするカチオン性シクロメタレート型イリジウム錯体を合成し、その構造的特性と発光性を調べた。
FT2
その構造的特性として、Ir(III)の周りは歪んだ八面体であり、Ir-C結合に対しhfppqがcisの位置、bipyのN原子がtransの位置にあり、Ir-CとIr-N(hfppq)結合距離はそれぞれ1.998Å、2.104Åであった。また、Ir-N(bipy)の結合距離は2.164Åと少し長かった。これはbipyのアリールグループがhfppqに対しtransの位置にあることによると考えられる。
また、本錯体は固体状態では595nm、塩化メチレン溶液中では585nmで強く発光し、燐光量子収率0.698、発光寿命0.96μsであった。発光寿命が短く、燐光量子収率が高いことは、高効率OLEDsの実現が可能であるとしている。

4、Sr3-xAxMO4F(A=Ca、Ba:M=Al、Ga、In)3)
オキシフルオライド含有Sr3-xAxMO4F(A=Ca、Ba:M=Al、Ga、In)は、新規無機燐光体のベースとなり、燐光体で変更されるLEDランプデバイスとして高いポテンシャルを有する。本論文では、本化合物を合成し、過去の文献情報をも含めてCIE座標を作成し(下表、下図)、微妙な構造変化と燐光性との関連を調べている。
FT3
ここで、[3]はC.H.Huangらの J. of Physical Chem.C-115 (2011) 2349、[12][13][17]はS. ParkらのJ. of Phys. Chem. C-114(2010) 11576、J. of Lumin. 129(2009) 952、J. Am. Chem. Soc. 132(2010) 4516である。
FT4
Fの効果としては、Sr-F結合が伸長することによりc軸の周りのチルト角が増大し、発光スペクトルが赤色側にシフトし、強度が増大したことと自己活性化光ルミネセンスを起こす顕著な効果があったことなどである。

5、3-フルオロフタレートを含有するランタニド錯体4)
金属錯体[Ln2(fpht)2(ox)(H2O)4]・H2O(Ln=Sm1, Eu 2, Tb 3, Dy 4;fpht=3-フルオロフタレート, ox=オキザレート)を合成し、構造解析を行い、発光性を評価した。4種の錯体は同じような2D骨組み構造を有し、Ln-fpht二重らせんおよびox連鎖構造をとっている。錯体2および3はそれぞれ、Eu(III)の5D0→7Fj(j=0-4)遷移とTbの5D4→7Fj(j=6-3)の遷移をする。発光減衰カーブは単一指数的であり、寿命は、2が0.266±0.002msであり、3が0.733±0.002msであった。錯体1は、Sm(III)の4G5/2→6H5/2、4G5/2→6H7/2、4G5/2→6H9/2の3つの遷移による弱いバンドを示した。錯体4の発光スペクトルは、438nm中心に配位子のπ*→π遷移によるブロードなバンドを示した。本4種の錯体はフッ素を含有しないフタレートを配位子とした場合より高い発光強度を示した。

6、最新特許情報
日立製作所は、下図の含フッ素ホスト材料を発光層に用い、簡便に白色発光できる有機発光素子を提案している。5)
FT5
南カルフォルニア大学は、下図に示す金属錯体(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジル-N、C2‘)イリジウム(III)ピコリナートを含む阻止層を有する発光デバイスを提案している。6)本阻止層は、電子、正孔及び/又はエキシトンを阻止する働きをする。
FT6
7、おわりに
含フッ素発光性金属錯体において、フッ素の役割は、強力な電子吸引性によりHOMOおよびLUMOエネルギーレベルを下げること、金属イオンを立体的に保護することによる発光強度を上げること、波長領域をシフトさせることなどである。本錯体の今後の展開に注目していきたい。

文献・特許
1) K. Iftikhar et al Inorganic Chimica Acta 392(2012) 446-453
2) Quian-Feng et al InorganicChimica Acta 394(2013) 184-189
3) Eirin Sullivan et al Journal of Solid State Chemistry 194(2012) 297-306
4) Xia Lee et al Journal of Solid State Chemistry 196(2012) 40-44
5) 日立製作所 特開2012-195601
6) ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア 特開2,012-165022