Archive for 10月, 2009

1. 新エネルギー

金曜日, 10月 16th, 2009

1-1 はじめに
鳩山首相は2020年までに地球温暖化ガスを1990年の25%まで削減すると発表し、国連でも演説して世界に向けて宣言した。地球温暖化ガスの大半は炭酸ガスであり、それは化石燃料によるエネルギー創出により発生する。1997年の京都議定書において地球温暖化問題が世界レベルで議論されてから特に化石燃料に代わるエネルギー、所謂新エネルギーの開発が本格化し、着々と実用化されている。この新エネルギーとは、風力発電、太陽光発電、地熱発電、燃料電池、二次電池などのことで、それぞれに開発が進み、大きな産業になりつつあり、今後最も期待される分野の一つである。
フッ素はこの中で、燃料電池、二次電池、太陽光発電における材料として期待されている。ここではこの三つの新エネルギーにおけるフッ素の役割と最新の情報を述べていく。第一回の2009年10月号として、燃料電池を取り上げ、11月には、二次電池、12月には太陽光発電を取り上げていくこととしたい。
basic_structure

1-2 燃料電池
燃料電池は下図に示すとおり、水素と酸素との反応により水が生成する時のエネルギーを電気エネルギーに変えて利用する。つまり、水の電気分解の逆の原理である。詳しくは水素が電極(水素極)でプロトンになり、電解質を通って他方の電極(空気極)に到達して、そこで空気中の酸素から変化していた酸素イオンと反応して水が生成する際のエネルギーを電気として取り出し利用すると言うわけである。

燃料電池には、電解質の種類により、リン酸型、溶融塩炭酸型、固定酸化物型、固体高分子型(PEFC)などがある。この内、常温から130℃の低温で使えるPEFCは、電解質として有機のイオン交換膜を使い、家庭用、携帯用、自動車用として適している。しかし、現状ではコストの壁が高く、計画通りには進んでいるとはいえない。例えば当初、2007年に本格的に立ち上がると言われていたノートパソコンなどの携帯用は、未だに立ちあがっていない。また、自動車用もめどが立っておらず、各社2020年ごろの立ち上げを目指していると聞く。それでも今年2月に開催された「国際燃料電池展」は盛況であり、関心の高さは衰えていない。その中で、家庭用燃料電池が発売され、電気エネルギーと熱エネルギーを合わせた80%以上の効率の高さが魅力となって、今後市場が拡大していくことが期待されている。
フッ素はこのPEFCにおいて、固体電解質としてパーフルオロカーボンスルホン酸PFCSA、その支持体としてポリテトラフルオロエチレンPTFE膜、触媒のバインダーとしてPTFEあるいはポリフッ化ビニリデンPVDF、さらには将来の電解液としてイオン液体などとして使用されている。
現在、電解質として用いられているPFCSAタイプの高分子電解質膜がプロトン伝導を発現するためには、水分が必要なために加湿が必要である。その手間はかなりの負担であり、無加湿での検討が試みられている。例えば、電解液にイオン液体ジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネートを用いることにより室温から140℃まで無加湿で運転できた。また、PFCSA膜を利用した低温作動電池では、電極、特にカソードでの発電によって生成された水(生成水)を利用して無加湿化ができた。その場合、電極内でのガス拡散不良を防止するために、撥水材であるPTFEを混合して、疎水性を与えた電極が多用されている。また、触媒層の触媒担体をフッ素系表面保護物質が吸着して水に濡れにくく、長期間安定に触媒物質を保持することやガス拡散層に撥水性多孔質フッ素樹脂を用いて、反応ガスの速やかな供給・除去を行う試みがなされている。
また、イオン交換容量が大きく、より電気抵抗が低いポリマーの開発も行われており、例えば下記のような複数のスルホン酸基を有するモノマーを合成し重合することが提案されている。
schematic

さらに、フッ素系電解質膜と炭化水素系電解し膜の複合化により、メタノールクロスオーバー(メタノールを燃料とする直接メタノール燃料電池DMFCにおいてメタノールが電解質内を透過してしまうことで、フッ素系電解質では透過しやすいと言われている)の低減や発電時および開回路電圧(OCV)時の電解質膜の劣化低減などが図られている。また、高分子電解質膜のガス遮断性の問題と高分子電解質膜の化学耐久性(耐ラジカル性)の両者を同時に解決する高分子電解質膜として、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜が溶融圧着で一体化された固体高分子型燃料電池用ハイブリッド膜が提案されている。