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3.環境問題

水曜日, 4月 21st, 2010

3、環境問題
3.3 PFOS・PFOA問題
 まずPFOS・PFOAおよび関連物質とは、下記の通りである。
  PFOS:C8F17SO3H PFOS関連物質:C8F17SO2N(R)-含有物質
  PFOA:C7F15COOH PFOA関連物質:C7以上のパーフルオロ基を有する物質
  例えば、C8F17C2H4OCOCH=CH2およびそのポリマー
  その用途は主に、PFOSが界面活性剤、PFOAがフッ素樹脂重合用乳化剤
 その関連物質は撥水撥油剤、防汚加工剤、消火剤の原料などである。
  それではPFOS、PFOAでは何が問題なのかであるが、所謂PBTであると懸念さ
 れている点だといわれている。

 つまり、Pは残留性、Bは生体蓄積性、Tは潜在的毒性である。最近の研究例で北極の野生動物からパーフルオロ化合物が検出されていることや、PFOAに発がん性の可能性が指摘されていることなどが根拠のようであるが、後者については動物実験の結果であって、人類における確認については不明である。PFOSは既にPOPs(Persistent Organic Pollutants)に指定された。
  

 PFOSについては、その関連物質を使った撥水撥油剤や界面活性剤の最大メーカーの3M社が2002年に製造中止して決着はついている。PFOAについては、2006年に米国EPAが製造メーカー8社に対して、2010年までに95%削減、2015年までに全廃の自主規制を促し、メーカー側は了承した。その後、旭硝子とダイキン工業は全廃時期を2012年に繰り上げると発表した。
  しかしながら、この市場は大きいので製造メーカー各社はその対策品の開発を推進しており、新聞発表や特許から次のような改良点が考えられている。
   ・ C6以下のパーフルオロアルキル基
   ・ パーフルオロポリエーテル基
   ・ 分岐パーフルオロアルキル基
   ・ 長鎖Rfを使用するが、分解してもPFOAに転化しない基 (RfC(CH3)2CH2CH2など)
  

 また、フッ素樹脂の乳化剤としてのPFOAについては徹底した除去方法を実施している。例えば熱分解やイオン交換樹脂の使用などである。
 現在のところ、PFOA対策品は、動的撥水性に劣る、風合いが硬いなどの課題があるようである。
  

 最新情報としては、界面活性剤としてCF3CH2CH2(CH2)nX、CF3CF2S(CH2)nX、(CF3)2N(CH2)nXが提案されている。ここでnは1~30の整数、Xはカチオン、アニオン、非イオン、重合性基などの官能基である。1) また、消火剤として、含フッ素ケトンCF3CF2C(O)CF(CF3)2が提案されている。2)

3.4 フッ素の回収・破壊、リサイクル
  フッ素についてはまず、オゾン層を破壊するCFCやHCFCの回収、破壊、リサイクルが行われ、それがさらにフッ素樹脂などにも適用されていった。最終的にはHFまで分解し、さらにCaF2つまり原料蛍石として回収することが一般的である。
  フロンに代表されるフルオロカーボン類の回収リサイクルは下図のように廃棄を申し出た業者が都道府県知事によって登録された第一種フロン類回収業者に処理費用を支払ってフロン類を渡し、次いで回収業者が国の主務大臣によって許可されたフロン類破壊業者に破壊費用を支払って破壊してもらう。
4-1

  また、フロン類を破壊する方法としては下記のような方法があり、実施されている。
・液体注入法:フロンを燃料ガスとともに冷却水中へ噴霧し、1,200℃以上で熱分解、燃焼ガスは冷却水へ噴霧され、急速に冷却されるとともに分解精製ガスを吸収する方法

・プラズマ分解法:コイルに周波数約4メガヘルツの高周波電流を通電して円筒形の反応機内部に発生するプラズマフレームの一万度に近い高温下でフロンと水蒸気を接触反応させる方法

  ・焼却法:セメント焼却炉ロータリーキルンを用いて焼却分解する方法

  ・触媒法:主触媒にハロゲン化金属を用い、その触媒再生機能を有する塩化第二銅を助触媒として組み合わせ、アルコールやエーテルと混合した後、ガス化したフロンを触媒層内に流通すことにより分解する方法

  2006年度のフロン類の破壊量は経済産業省・環境省のデータによると、約3183トン、前年度比14%増加であった。その中で、フロン類破壊業者に引き取られたフロン類は3201トン。第1種特定製品(業務用冷凍空調機器)から約15%増の約2430トンのフロンが回収され、第2種特定製品(カーエアコン)から約11%増の772トンのフロン類が回収された。また、フロンの種類別ではCFC590トン(19%)、HCFC1821トン(57%)、HFC772トン(24%)であった。森田化学は最近の特許で下図の方法で回収することを提案している。3)
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また、産業機械2008年5月号には荏原製作所が循環型フッ素リサイクルシステムを紹介している。4)
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含フッ素ポリマーをリサイクルするには、(1)ポリマーを再成形する、(2)モノマーに戻す、(3)高温で処理して発生したフッ酸をCaF2の形で回収する、の3つの方法が知られている。(3)の方法のイメージは下図の通りである。5)
4-4_01<
   また、ダイキン工業は2007年の特許で、含フッ素エラストマーを脱架橋して、さらに再架橋を行う方法を提案している。再架橋の際の架橋剤としてはオキサゾール架橋剤、イミダゾール架橋剤、チアゾール架橋剤が用いられている。6)

 

文献・特許

1) メルク パテント 特表2009-541403

2) 日本カプセルプロダクツ 特開2009-160387

3) 森田化学 特開2007-196179

4) 赤堀晶二、中川創太 産業機械2008,5 p12

5) 平井啓 Material Stage 4(10)9(2005)

6) ダイキン工業 特開2007-63334

3、環境問題

水曜日, 3月 31st, 2010

3,1はじめに

 フッ素を取り巻く環境は依然として厳しい。1976年のオゾン層破壊問題の指摘に端を発し、1997年の地球温暖化問題、さらには最近のPFOA/PFOS問題と次々に深刻な課題が突きつけられている。また、廃水・廃棄物処理・リサイクル問題も大きな課題である。ここではオゾン層破壊問題と地球温暖化問題(3月)、PFOA/PFOS問題と廃水・廃棄物処理・リサイクル問題(4月)を取り上げる。

3,2オゾン層破壊問題

 フロンの中で塩素を含む化合物、つまり炭素とフッ素と塩素から成るクロロフルオロカーボンCFCは安定すぎる故、大気圏では分解されず、オゾン層まで到達し、CFC中のC-Cl結合がラジカル的に切断され、オゾンと反応してオゾン層を破壊すると米国のローランド教授が指摘し、モントリオール条約(MOP)から規制が始まったことはよく知られている。また、CFCに更に水素が導入されたHCFCも大気圏での分解性はCFCよりは高いが、かなりの部分が分解されずオゾン層に到達するので、1995年のウイーン条約で規制の対象となった。

CFCは、先進国では1996年に全廃され、現在ではエッセンシャルユース例えば三フッ化塩化エチレンの原料であるCFC-113 などを除いて全廃されているが、発展途上国においては未だに流通しているという情報がある。

HCFCは2007年の第19回締約国会議で、その生産・消費全廃や削減目標達成次期が前倒しされ、先進国は2020年、MOP5条国に該当する途上国は2030年までに原則全廃を目指している。わが国ではHCFC-141bは昨年末までに全廃され、残っているのはHCFC-225で2020年には全廃される予定である。HCFCも4フッ化エチレンの原料であるHCFC-22やフッ化ビニリデンの原料であるHCFC-142bなどもエッセンシャルユースとして残されるであろう。

3,3地球温暖化問題

 オゾン層を破壊しないということで塩素を含まないフルオロカーボンがCFC全廃後主流となった。パーフルオロカーボンPFC、パーフルオロエーテルPFE、ハイドロフルオロカーボンHFC、ハイドロフルオロエーテルHFEなどである。しかし、これらの内、PFCやHFCは安定ゆえに地球温暖化の度合い(地球温暖化係数GWP値)が炭酸ガスの1000倍以上あるということで、1997年の京都議定書で規制の対象となった。また、電気および電子機器の分野で絶縁材などとして広く使用されているSF6などもGWP値が高く規制されている。下表に各フルオロカーボンとGWP値(100年値)を示す。

SF6の代替としてはトレーサーガス用途としてパーフルオロメチルシクロヘキサンやパーフルオロメチルシクロペンタンがある。現在自主規制の形で規制され始めているHFCはGWP値が1000以上の冷媒HFC-134aなどであるが、今後の状況は予断を許さない。比較的GWP値の低いHFCやHFEが完全に主流になったと言える。また、主に冷媒としてハイドロフルオロオレフィン(HFO) が最近注目を浴びている。それはGWP値が炭酸ガス並みに低いからである。

化合物

GWP値

PFC14

6500

SF6

23900

HFC-134a

1410

HFC-365mfc

890

HFC-76-13sf

136

  環状HFC C5H3F7

250

HFE-7100

297

HFE-7200

59

HFO-1234yf

4

 以下に最新情報を述べる。

1、 環境省は2009年8月28日、「オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」をまとめた。それによると、2008年発生した南極オゾンホールは過去10年間の平均を上回る規模になった。これは6~8月に南極上空の低温域(マイナス78℃以下)の面積が大きかったことが要因だと言う。全球的にみるとオゾン全量は減少傾向が続いており、北半球高緯度と南半球中高緯度で特に顕著だという。特定物質などの大気中平均濃度については、北半球中緯度域の平均的な状況を代表するとみなせる北海道で観測している。CFC-12は90年代以降横ばい、CFC-11、CFC-113、四塩化炭素は約1%/年のベースで減少している。一方、HCFC-22、HCFC-142bなど大気中濃度は急速に増加しており、特にHFC-134aの増加率は約8.4%/年と大きかった。

2、 HFE-7000シリーズの塩素との反応を調べた報告がなされた。水素引き抜き反応が起こり、その反応速度定数を求め、大気中での寿命を議論している。結論として反応速度定数は大きく、寿命が短く、地球温暖化ポテンシャルは低いとの結論に達している。1

3、 消火剤として京都議定書の規制を受けない化合物が提案されている。CF3CF2C(O)CF(CF3)2などのパーフルオロケトン類。2

4、 新しい洗浄・希釈用途向けにTrans1,2-ジクロロエチレン/HFE-7100/HFE-7200=70/10/20の混合物が開発・販売された。GWPは43と低い。このように最近は、フッ素系溶剤と塩素系あるいは臭素系溶剤の組み合わせの組成物が開発されている。

5、 上表に掲げたHFO-1234yfを用いる冷凍装置の提案がなされている。3

6、  HFO-1234yfについて、毒性、燃焼性などの物性を調べた報告がなされた。結果は、毒性は低く、燃焼性はHFCに比して低いことが分かった。4

7、 8種類のHFO、ハイドロフルオロプロピレンについて、臨界温度、臨界圧力、臨界密度、偏心係数と一定圧力での理想ガス比熱をグループ寄与法で予測した報告がなされた。5

8、  所謂ノンフロン化も進んでいる。冷媒技術ではCO2を用いる方法が有望視されている。また、ウレタン発泡技術では、水とイソシアネートとの反応により生ずるCO2を発泡剤に用いる方法(水発泡システム)が開発され、ウレタン工業会は、今年8月をめどに住宅用吹き付け硬質ウレタンフォームの発泡剤をすべてノンフロン化するとした「ノンフロン化宣言」を1月26日に行った。

 

 

文献・特許

1) Ernesto Martinez et al  Chemical Physics Letters 479(2009) 20

2)日本カプセルプロダクツ 特開2009-160387

3)ダイキン工業 特開2009-250592

4)Yunho Hwang et al  International Journal of Refrigeration 33(2010) 212

   Steven Brown et al  Internationa Journal of Refrigeration 33(2010) 235